腹を探り合う米朝
核・ミサイル問題をめぐって対立する米国と北朝鮮が、対話の糸口を探り合っている。ティラーソン米国務長官は12日の講演で、最初の会談は「前提条件なしで会う用意がある」と述べ、秋波を送った。北朝鮮も国連側と対話の継続で一致したとされる。ただ米朝首脳の本音は不明で、先行きは見通せない。
特集:北朝鮮、ミサイル発射
「天気の話だっていい。せめてお互いに顔を合わせて話そうではないか」。ティラーソン氏はワシントンでの講演で、北朝鮮側にこう呼びかけた。米政権はこれまで北朝鮮が核放棄に向けた具体的な行動を取ることを前提としてきたが、「現実的ではない」。まず、今後の話の進め方についてのロードマップ(行程表)の話し合いから始めてもいいとの考えを示した。
ティラーソン氏は、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長について、金正日(キムジョンイル)総書記や金日成(キムイルソン)国家主席とは政策や考え方が異なっているとも指摘。「(正恩氏と)関係を築いた者は誰もいないし、どのように関わっていくのかも分からないので、まず相手を理解すべきだ」とし、協議の必要性を訴えた。ただ、そのためには「静かな期間が必要だ」とも述べ、北朝鮮側が核・ミサイル実験を中止するよう求めた。
一方でティラーソン氏は「米国の方針は明確で、朝鮮半島の完全かつ検証可能な非核化だ」とも語り、交渉を通じて核の放棄を求めていく考えも示した。「私は、最初の爆弾が(北朝鮮に)落ちるまで外交努力を続ける」とも述べ、軍事手段ではなく、制裁を中心とした圧力による解決を続ける意思を示した。国務省高官は12日、ティラーソン氏の発言について「対話を通じた解決に非常に楽観的であることを示したものだ」と記者団に説明する。
ティラーソン氏は9月末、北朝鮮と「二、三の対話ルートを持っている」と述べ、水面下で対話を続けていることを明らかにした。これに対し、トランプ大統領は「時間の無駄」と切り捨て対立した経緯がある。だが、その後も国務省主導で、ニューヨークの北朝鮮国連代表部や米政府元幹部らを通じて北朝鮮高官との非公式の協議を続けている。米政府関係者によると、ホワイトハウスは安易な対話には反対の立場を崩しておらず、確執が深まっているという。
これに対し、ホワイトハウスのサンダース報道官は声明で、「北朝鮮に対する大統領の見解は変わっていない」とし、トランプ氏が核放棄を対話の条件とする姿勢を変えていないことを強調。国務省とホワイトハウスの食い違いを見せた。
ティラーソン氏が北朝鮮との対話に前向きな姿勢を示す一方で、来日した米国務省のジョセフ・ユン北朝鮮政策特別代表も、外務省幹部に対し、対話には非核化に向けた具体的な行動が必要だとの従来通りの米政府方針を改めて示したという。
外務省幹部は「ホワイトハウス…