米国と欧州の中央銀行が超金融緩和からの脱却に着々と向かうなかで、日本銀行は、米欧以上の規模で続けている超金融緩和をこのまま続行する。日銀は20~21日の金融政策決定会合で当面の政策運営の方針を決めた。21日の午後3時30分から黒田東彦(はるひこ)総裁が記者会見して詳しく説明する。
日銀「現状維持」決める マイナス金利は年0・1%
おおかたの予想通り、黒田日銀は「出口」政策へと動かなかった。この点は前回までの決定会合とまったく同じだ。
黒田総裁の任期(来年4月上旬まで)中の政策決定会合は今回を含めて3回。もはや黒田日銀下で大きく出口戦略へとかじを切る可能性は薄い。問題はこのまま超金融緩和状態を続け、場合によっては追加緩和を迫られるような2%インフレ目標を維持したまま任期を終えるのかどうかだ。
黒田総裁も本音では、少なくとも出口への糸口だけでも見つけて後任にバトンを渡したいと考えているだろう。そのあたりを残り3回の会見でどう表現してくるか。
とはいえ、ちょうど次期総裁の人事ともからむタイミングである。黒田氏以上にリフレ色が強い総裁候補の名前もあがっているだけに、その行方を見極めないと、下手に出口論を打ち出して人事に影響を与えてはいけないと考えているのかもしれない。
米連邦準備制度理事会(FRB)は今月13日、この出口局面で今年3回目の利上げを決めた。2008年のリーマン・ショックから始めた超金融緩和から着々と正常化へ歩みを進めている。欧州中央銀行(ECB)も来年1月から、国債を大量に買い取る量的金融緩和を縮小する。縮小は今年4月に続く動きだ。
米欧も、超金融緩和の結果、狙い通りにインフレ率が上昇しているわけではない。イエレンFRB議長は足もとの物価停滞を「ミステリー」だと評しているほどだ。それでも目下の課題は、リーマン・ショック対応で始めた異例の超金融緩和を早く正常化させることになっている。
その理由はいくつかある。第一に、超金融緩和を長期化させてもインフレに与える効果は限定的だとはっきりしたこと。第二に、近い将来、何らかの経済ショックに見舞われたときに金融緩和手段を確保するため、今のうちに利上げで「のりしろ」を確保しておくためである。
まもなく議長職を辞すイエレン議長の率直な言葉と政策決定をみて、悩める黒田総裁はどう考えているだろうか。きょうの会見もいつものように「米国は米国、日銀は日銀で考える」と突き放した答弁を繰り返すのか。時間切れ間近い総裁の口から、もっと率直で正直な言葉が聞きたいものだ。(編集委員・原真人)