サル寄せ場を独占するB群=大分市神崎の高崎山自然動物園
高崎山自然動物園(大分市神崎)で、サルのC群が12月4日を最後に「寄せ場」に姿を見せていない。山中のエサが少なくなり、力関係で優位に立つB群に、エサが配られる寄せ場を独占されたためだ。昨冬に続く異変に職員は「最悪の場合、群れが消滅するかもしれない」と対策に懸命だ。
B群には706匹、C群には659匹のサルがいる。寄せ場では小麦やサツマイモなどのエサをまいてサルを呼び、職員が観光客にサルの生態を解説する。
山に木の芽などのエサが豊富な春から秋の時期は、両群が寄せ場に交互に顔を出し、C群のアイドルで英王女と同名のシャーロットが観光客を和ませていた。
ところが冬に入りエサが少なくなると、B群が一日中寄せ場にたむろし、C群を寄せ付けなくなった。C群が最後に姿を見せた12月4日も、午前9時ごろに5~10分滞在しただけで、後から現れたB群に追われ、山に戻ってしまった。
昨冬も同じ状況が続いた。C群の幹部級のオスが相次いでB群に移籍した影響とも言われ、職員が山に入って小麦をまいた。
職員の藤田忠盛さん(47)は「C群は人材不足」と嘆く。サル社会は群れにどれだけ長くいるかで序列が決まる。年配の幹部が抜けた後のC群は、B群と比べ、若くて経験が浅いオスが多くなっているという。
高崎山では2002年に800匹ほどいたA群が寄せ場を追われ、エサ不足から分裂、やがて消滅した。藤田さんは「対策をとらないと、数年のうちにC群もA群の二の舞いになりかねない」と危機感を募らせる。
園では今、朝5時から職員が山に入りC群を寄せ場近くに誘導している。「ホーイ」と高い声で呼びかけると反応があるという。寄せ場に来る習慣を残すため、山中ではあえてエサはまかず、寄せ場から300メートルほどの場所で1日二十数キロの小麦を与えている。藤田さんは「みんな愛着があるので、なんとか出てきてほしい」と話している。(興野優平)