昨季、川崎が本拠でチャンピオンシップ決勝進出を決めた5月20日の準決勝第2、3戦には、4608人が集まった
今月6日、昨季B1準優勝の川崎を、IT大手の「ディー・エヌ・エー(DeNA)」が親会社の東芝から買収することが発表された。Bリーグで初めての本格的なクラブの身売り。スポーツビジネスで実績のあるDeNAの参入が、リーグ全体にもたらす影響を期待する声も聞かれる。
DeNAは、2011年からプロ野球の球団経営に乗り出し、6季で観客を1・8倍に増やした。ベイスターズを手がけた経験を買われて川崎の運営会社社長に就く元沢伸夫氏はバスケットについて「観戦型のスポーツとしては野球、サッカーをはるかにしのぐ」と評価。「季節や気候を選ばない環境、得点シーンの多さ、3点シュートやダンクなどルールが分からなくても明らかに盛り上がる場面が1試合に複数あること」などの長所を挙げ、「昨季の決勝を見た時からやりたいなと思っていた」と明かす。東芝とは7月から交渉を開始。急ピッチで話がまとまった。
売却額は来年6月期の帳簿価格となる。今年3月期時点では300万円だ。格安に思えるが、DeNAは今季からスポンサーとして「決して少なくない金額を」(元沢氏)支援することにしており、「(売却額は)これを踏まえた額と考えてほしい」と説明した。
課題の一つは旧実業団であるチームの収支構造改善。11月に公表した昨季の決算によると、川崎はスポンサー収入が6億4千万円で、収入に占める割合は67%。B1で3番目に多く、「メインスポンサー」である東芝からの収入が多くを占める。DeNA側は「3年後を目安に自立的な経営ができるようにしたい」と目標を掲げる。
一方で川崎はBリーグ最初のシーズンだった昨季、観客動員数の伸び率が前年比244%でリーグ1位だった。元沢氏も「今までのスタッフの努力をいったん引き継ぐ。やれることはたくさんあるが、先入観を持たずに進めたい」と話す。
Bリーグの大河正明チェアマンは、「DeNAが将来のスポーツ事業の核になると判断したからこそ。Bリーグが投資を募れる存在になってきたという意味でターニングポイントだ」と評価した。一方で、「Jリーグも含め、親会社の出向者が経営の中枢にいることが、スポーツ業界が成長しきれない一つの要因」と指摘。今回の参入について「バスケット界が大きくなれるチャンス」と歓迎する。(伊木緑)