政府の経済政策や物価高などに抗議してイラン各地で30日までに起きた反政府デモは同日夜になっても収まらず、最高指導者ハメネイ師への批判が始まるなど体制への抗議の色合いが濃くなってきている。地元メディアによると、テヘランでは一部の参加者が交通標識やガードレールを破壊したりゴミ箱に火をつけたりなどしており、逮捕者も3人出た。
イランでは28日、北東部にある第2の都市マシュハドで日用品の価格高騰などに抗議するデモがあったのを皮切りに、30日までに抗議デモが各都市に波及。参加者は当初、「ロハニ大統領に死を」「シリアなどを支援するのでなく、国民を見ろ」などと、反政府のスローガンを叫んでいた。
さらに怒りの矛先は、批判することがタブー視される最高指導者ハメネイ師にも向かい始めた。インターネット上には、各地のデモ隊が路上に飾られた同師の写真を引きはがす映像も投稿されている。
デモはイラン各地で続いている模様だ。警察のほか、イスラム体制の護持を目的とするイランの精鋭部隊・革命防衛隊がデモの鎮圧に乗り出したとみられ、大規模な衝突も懸念される。西部ロレスタン州ではデモに参加した市民のうち少なくとも2人が治安当局との衝突の際に撃たれて死亡したとの情報もある。
一連のデモは、ネットのSNSを通じて情報が拡散し全土に広がったとみられている。政府や宗教指導者はSNSへの批判を強めており、テヘラン市内では30日夜、一部の携帯電話などでネット通信が遮断されるなどした。(テヘラン=杉崎慎弥)