脚本家の森下佳子さん=東京都渋谷区、恵原弘太郎撮影
希望はどこに 脚本家・森下佳子さん
先が見えない時代、人はどうしても不安を抱きがちです。NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」や朝ドラ「ごちそうさん」などで、厳しい時代を生き抜いていく人びとの姿を描いてきた脚本家・森下佳子さん(46)は、不安になると、禅のある教えを思い出すといいます。シリーズ企画「希望はどこに」の第2回。森下さんが軽妙に語ります。
「わかり合えないけど好き」を積み上げる 水野良樹さん
いま、いろいろなことが曲がり角に来ているような気はするんですね。社会保障、安全保障。高齢化社会。このままだと立ちゆかないことがわかっているのに、結論はみんな出せていない感がすごくあって。その中ぶらりんな状態が、不安や閉塞(へいそく)感を増したりするのかもしれないですね。
NHK大河ドラマの「おんな城主 直虎」をやると決まったとき、戦国時代はどんな時代だったかと考えて、絶対暮らしたくないなと思ったんですよ。突然、戦場に行かなきゃいけなくなったり、いきなり敵兵が来て略奪されたりするわけですから。先がどうなるかわからないということが、当たり前の世界。私は生きたくないなあ。生き残る自信もあんまりないです。
でもね、戦国時代に限らず、程度の差こそあれ、いつの時代も世の中ってそもそも先行き不安なものなんじゃないかな、とも思うんです。「いい時代だったね」とかは後々俯瞰(ふかん)で語るものでしかない。ただ、先がわからないということにどこまで不安を覚えるかは、人や時代によって違うような気がします。
例えば、いま30代半ばの人は、小学生くらいのときに、親がバブル崩壊を経験するのを見ていると思うんですよ。子どものときに世の中ががらっと変わるのを目の当たりにすると、不安に備えなきゃという人が増えるのかも。
ちなみに、私は1971年生まれです。バブルがはじけるまでは世の中は経済的には上向きでしたね。就職のときがちょうど氷河期始まりくらいの世代。ただ、ホントにアホだったので、まあ何とかなるだろうという感じで。ノストラダムスの予言で1999年に世界は終わるかもしんないし。じゃ、好きにやった方がトク、みたいな。そのくらいのノリで生きてました。なんか、ごめんなさい。
結局、テレビ局に全部落ちて、拾ってくれたリクルートに入って、「住宅情報」という雑誌の編集部に配属されました。原稿を直したり、縮めたりする仕事はむいていたし、楽しかったんですが、色々むちゃ言ったりして、1年で正社員は辞めちゃった。ただ当時の上司が面白い人で、バイトでなら続けていいよと。それで、アルバイトの編集者として7年くらいいましたね。言葉にするとホント何も考えずにやってますね。私。
脚本家になったのも、コンクールで受賞したり、劇団で実績を上げたりとかではなくて、現場から入りました。プロットライターという、ドラマのあらすじや登場人物のネタを出したり、それを書面に起こしたりする仕事です。その中で、自分の強みを生かせる隙間を探しましたね。編集者や記者をやっていたので、ものを調べるのは他の人たちよりもできるだろう。原稿を書くのが速いので、それは強みになるだろう、と。実際それはそうでした。手の内に何らかの技術があるって大事だなあ、経験って自分を裏切らないなあ、いや何でもやっとくもんだって思いましたよ。
不安を取りだして見せてくれ
「『直虎』をやる中ですごく好きになった禅のお話があるんです」
「直虎」で、龍雲党というオリ…