自宅の裏の土地を借りて始めた陸稲栽培について説明するスラメットさん(右)と妻ロハヤさん=インドネシア・スマトラ島南部カランエンダ、古谷祐伸撮影
インドネシア・スマトラ島南部の農村カランエンダ。昨年7月、約200人が暮らす平和な集落には珍しい、警察が出動する騒ぎが起きた。原因は村道の大渋滞。300人以上が民家に集まった盛大な結婚式の混雑のせいだった。
新郎は地元のスラメットさん、16歳。新婦は同じく地元のロハヤさん、71歳。年の差は55歳だ。同国の法律が定める結婚最低年齢の「男性は19歳、女性は16歳」も満たしていない。「大事件」だった。
2人は口をそろえる。「日雇いの農作業で離れ離れになる日中の数時間が、数週間にも数年間にも思えて、相手が恋しいのです」
5メートル四方ほどの粗末な木造住宅に、家具は食器棚と小さな食卓、寝具のみ。近所の農園の草取りや収穫といった日雇い仕事が収入源で、明日食べるコメを買うのもやっとだ。財産などない。それでも2人は「幸せだ」と取材に繰り返した。
スラメットさんは生後間もなく父親が事故死し、再婚した母親には育児を放棄された。村民に養育されたが、物心ついたころから「誰からも愛されていない」と感じていた。小学校を10日間で中退し、日雇い労働をしていた。
ロハヤさんは2回の結婚を経験したが、いずれも夫が病気で早世。「私が愛した人は不幸になる」と悲観し、農家の草むしりを手伝って日銭を稼ぎ、息子と暮らしていた。
2人が出会ったのは数年前。養父母とともにスラメットさんがロハヤさんの近所へ引っ越し、ロハヤさんの息子と親友になったのがきっかけで、ロハヤさん宅にほぼ居候状態になった。
2016年春、マラリアにかか…