1カ月余り前、星野さんの殿堂入りを祝う会で撮ったツーショット写真を手にする山田定雄さん=仙台市青葉区
星野仙一という人間にとことんほれ込んだのは、仙台駅西口近くのすし店「鮨(すし) 仙一」店主の山田定雄さん(61)だ。
楽天の監督就任が縁で親交も生まれ、昨年11月末に東京であった「殿堂入りを祝う会」で会ったばかり。祝賀ムードを台無しにすまいとの配慮からか、「病気のことなど言わずに元気に振る舞っていた。最期までやさしくて強い人だと思った」。背番号77のサイン入りユニホームを飾った店内で目をうるませた。
31年前に開いた店の名前は「仙台で一番に」という闘志と、時を同じくして中日ドラゴンズの監督になった星野さんの名前にあやかった。「福島県にいた子どものころ、テレビで常勝巨人をなぎ倒す全力投球を見て、強い相手に立ち向かう姿にあこがれた」
店のことはしばらくして共通の知人を通じて星野さんの耳にも入った。初めて店を訪ねてくれたのは2010年、楽天の監督就任が決まって間もないころ。大学時代以来のライバルで親友の田淵幸一さんらと一緒にひょっこり現れた。
それから年に数回、友人やコーチらを連れて来店するように。「すし屋といえばカウンターだ」と、目の前で握られた好物のコハダや貝類を口に運び、飲めない酒代わりにお茶をすすって楽しそうに話す姿が印象的だった。
ある時、ふと尋ねたことがある。「なぜ巨人戦にあんなに強かったんですか?」。「ふるさと岡山にいる母親に元気な姿を見せたかったから」。当時のプロ野球のテレビ放送は多くが巨人戦。家族思い、弱い人にやさしい人柄を感じた。
だが、就任1年目の開幕直前に…