南スーダンPKOでの陸上自衛隊の日報をめぐる稲田朋美防衛相の国会答弁に、抗議する人たち=昨年2月10日夜、東京都千代田区
仮に憲法9条に自衛隊を明記したとしても、その役割をめぐる議論が尽きることはない。南スーダンでの国連平和維持活動(PKO)では、数多くの問題に直面した。安倍晋三首相が唱える「積極的平和主義」は、どこに向かうのか。(谷田邦一)
生きて描きたい、絵は叫ぶ 戦争が奪った画学生の尊厳
40度を超す炎天と乾いた大地。独立直後の南スーダンで、陸上自衛隊が活動を始めて2年近くが過ぎた2013年12月。第5次隊は首都ジュバで、政府軍と前副大統領が率いる反政府勢力との内戦に遭遇した。
戦闘は広がり、多数が死亡し数百万人もの難民や避難民が生まれた。インドの部隊が襲われ、国連側にも死者が出た。
「正当防衛や緊急避難に該当する場合には、命を守るために撃て」。宿営地のそばでも銃撃戦が起きた翌14年1月、隊長だった井川賢一氏は、約400人の全隊員に小銃と弾薬を携行させ、こう命じた。宿営地に隣接する国連施設には、約1万人の避難民がなだれ込む事態になっていた。
井川氏は同年4月の朝日新聞の取材に対し、「政府軍からすれば避難民は敵。虐殺が始まる可能性もあった。隊員を死なせるわけにいかない。最低限の自衛だけはさせる必要があると考えた」と説明した。
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憲法9条を踏まえ、PKO協力法は、紛争当事者の停戦合意など「参加5原則」を定めている。異例の射撃許可は必要最小限の武器使用にあたり、法に触れないと判断された。
では、停戦合意は崩れていなかったのか。安倍政権は早々と、反政府勢力は「『国または国に準じる組織』にならない限り紛争当事者には当たらない」との理屈をつけて撤収論を退けた。折しも、政府が国家安全保障戦略を発表。「国際協調主義に基づく積極的平和主義」を掲げたタイミングと重なっていた。
この議論は昨年、蒸し返された。16年7月にジュバで再燃した武力衝突や、自衛隊の記録にあった「戦闘」の表現をめぐり与野党が激論。安倍首相や稲田朋美防衛相(当時)は「法的な戦闘行為ではなく武力衝突」と主張し、5原則は満たされていると突っぱねた。
内戦勃発の翌14年夏から、陸…