イプシロンの軌跡に残った「夜光雲」とみられる雲=18日午前6時31分、鹿児島県姶良市加治木町、全日写連・二宮忠信さん撮影
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は18日、固体燃料ロケット「イプシロン」3号機を鹿児島県肝付町の内之浦宇宙空間観測所から打ち上げ、NECが開発した小型観測衛星「ASNARO(アスナロ)―2」を予定の軌道に投入した。打ち上げは日の出前の午前6時6分。快晴の空では、ロケットから伸びる明るい光跡や複雑な形で漂う帯状の雲など、珍しい現象が見られた。
イプシロン3号機、打ち上げ成功 鹿児島・内之浦
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イプシロンは全長約26メートルの小型ロケット。3号機は2号機を改良して軌道投入精度を高めた。ASNARO―2は地表の1メートルの大きさを見分けられる高性能レーダーを持ち、災害現場などの画像データの販売をめざす商用衛星。
打ち上げ数分後には、ロケット燃料の炎とは別に、彗星(すいせい)の尾のような白い光の帯が真っ暗な空に輝いた。高度100キロ以上の上空で噴出された燃焼ガスが太陽光に照らされたとみられ、JAXAの担当者は「日の出前と快晴という条件が重なったため」とみる。
空が白んできた約30分後には、帯状の雲が赤みや青みを帯びて一筆書きのように漂う様子が見られた。日本気象協会九州支社(福岡市)の気象予報士、吉竹顕彰(あきら)さんによると、雲の形や光の具合などから、通常の雲よりはるかに高い80キロ程度の上空に現れる「夜光雲(うん)」とみられるという。ロケットが上空で出したガスや水蒸気によって出現した可能性がある。日本付近で自然に現れることは珍しく、「貴重な報告だ。気象条件がよければ九州より東の太平洋側でも見えたかもしれない」と話す。(小林舞子)