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衆院予算委員会の2日目。午後は補正予算案の締めくくり質疑が開かれました。憲法9条や、スーパーコンピューター開発を巡る国の助成金詐取事件などの幅広いテーマをめぐり、一問一答形式での論戦をタイムラインで追いました。
衆院予算委で質問する希望の党の柚木道義氏=30日午後2時33分、岩下毅撮影
首相、ICANとの面会「今後、日程など踏まえて検討したい」 共産・藤野氏に
共産党の藤野保史氏は、2017年のノーベル平和賞を受賞した「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)のベアトリス・フィン事務局長が来日した際、首相との面会を求めたにもかかわらず、実現しなかったことを取り上げた。
首相は12~17日に外国出張中だったことなどを理由に面会できなかったと説明。そのうえで、「今後、ICANの事務局長から改めて面会要請があった場合には、そのときの日程などを踏まえて検討したい」と答えた。
その後、日本維新の会の杉本和巳氏が質問。各会派の代表が2017年度補正予算案に賛成、反対の意見表明を行った後、予算案は賛成多数で可決された。2日間に及んだ補正審議のための衆院予算委員会の論戦は、幕を下ろした。
伊藤詩織さんが傍聴 希望・柚木氏、性犯罪被害など質問
希望の党の柚木道義氏が質問に立った。望まない性行為で精神的苦痛を受けたとして元TBS記者の男性ジャーナリストを訴えているジャーナリストの伊藤詩織さんの手記を紹介し、性犯罪被害などについて取り上げた。
衆院予算委を傍聴するジャーナリストの伊藤詩織さん=30日午後2時35分、岩下毅撮影
柚木氏は、傍聴席に伊藤さんが来ていると紹介。首相に、伊藤さんの本の内容などに関連した質問をした。伊藤さんは、傍聴席でじっとやりとりを見ていた。
民事訴訟をめぐっては、伊藤さんの主張に対し、男性の主張は真っ向から対立している。
予算委は国会の「花形」
今日の衆院予算委員会は、2017年度の補正予算案についての審議だ。29日に続いて2日目となる。
例年、政府は年始めの通常国会に合わせて補正予算を編成することが多く、通常国会が始まると首相の施政方針演説、各会派の代表質問に続いて、衆参両院の予算委が補正予算を審議する流れになる。
予算はあらゆる政策分野に関連するため、予算委では首相や閣僚に幅広く質問できる。そのため、沖縄政策や森友・加計学園問題など幅広い論戦が交わされる。一部はNHKで中継もされる。まさに国会審議の「花形」で、各党は競うように質問者に「エース」を投入する。(山岸一生)
衆院予算委で、原口一博氏の質問に対する答弁者に関して、委員長席に詰め寄る与野党の理事ら=30日午後3時10分、岩下毅撮影
茂木氏、有権者への手帳配布は「政党の政治活動」 立憲・本多氏「政治資金団体で購入、政党支部に無償寄付」と指摘
続いて質問に立ったのは、立憲民主党の本多平直氏。北海道選出の当選3回。茂木敏充・経済再生相が地元の選挙区で有権者に線香や「衆議院手帳」を配っていた問題を取り上げた。
衆院予算委で、立憲民主党の本多平直氏の質問に答弁する茂木敏充経済再生担当相。右下は安倍晋三首相=30日午後1時33分、岩下毅撮影
質問に対して茂木氏は、手帳を配ったことについて「政党の政治活動として行っております」と答えた。本多氏は茂木氏の政治団体が手帳を買っていると指摘。「政治資金団体で購入し、政党支部の方に無償で寄付し、配布している」と強調した。
茂木氏は29日の衆院予算委では、「線香」について質問された。25日発売の週刊新潮が、茂木氏の秘書が選挙区内の有権者に1千~1500円で市販されている線香を配っていたとする記事を掲載。茂木氏は野党議員の質問に対し、自身の秘書が選挙区の有権者に線香を配っていたと明らかにした。
政治家が選挙区内の有権者に金銭や物品を配る行為は、公職選挙法で禁じられている。ただ、茂木氏は答弁で「配布したものに私の氏名は入っていない」などと説明し、違法性は否定している。
衆院予算委で、立憲民主党の本多平直氏の質問に対する安倍晋三首相(左)の答弁内容に関して、委員長席に詰め寄る野党の理事ら(右)=30日午後1時46分、岩下毅撮影
首相「労働界と経済界の合意」強調 自民の「働き方改革」の質問に
今国会で安倍晋三首相が最重要法案と位置づける「働き方改革」について、自民党の盛山正仁氏に考えを問われた首相。「長時間労働を是正するため、今回、史上初めて労働界と経済界の合意の上に、ここは大切なところだと思うんですが……」。あくまでも「労使の合意」を強調した。
自民、トラック業・建設業の「働き方改革」を質問
通常国会のひとつの焦点が、「働き方改革」だ。安倍晋三首相は施政方針演説で、「働き方改革を断行する」と強調した。この日の衆院予算委員会で質問に立った自民党の盛山正仁氏は、トラック事業や建設業の「働き方改革」について質問した。
石井啓一・国土交通相は、トラック事業では荷主や配送先の都合によって「荷待ち時間」が発生し、建設業では天候不順などで作業日程が圧迫される中、施主から工期を厳格に守るよう求められると説明。「荷主や施主からの理解と協力が得られるよう率先して経済団体などに働きかけを行ってまいりたい」と述べた。
衆院予算委で質問する自民党の盛山正仁氏(左下)=30日午後1時16分、岩下毅撮影
議事の進め方を協議、再開遅れ
衆院予算委員会は午後1時16分から始まった。開始が遅れたのは委員会に先だって議事の進め方について話し合う理事会の時間がかかったためだ。質問のトップバッターは自民党の盛山正仁氏。兵庫1区選出の当選4回。働き方改革について質問を始めた。
時間になっても衆院予算委が開会されず、小野寺五典防衛相(中央)らと言葉を交わす安倍晋三首相(手前後ろ姿)=30日午後1時6分、岩下毅撮影
政府側、スパコン助成金詐取事件「政治家の関与はなかった」
衆院予算委員会が午後1時過ぎに再開する。29日の質疑では、松本文明・前内閣府副大臣のヤジや、森友学園への国有地売却問題、働き方改革などをめぐって論戦が交わされた。
30日午前にはスーパーコンピューター開発を巡る国の助成金詐取事件について、政府側は「現時点で確認できる範囲では(助成金の交付に)政治家の関与はなかった」と発言。憲法改正をめぐっては、安倍晋三首相は憲法9条1項・2項を残して自衛隊を明記しても、安全安全保障法制で認められている限定的な集団的自衛権の行使は変わらないとの考えを示した。
午後の論戦でもさらに深掘りした議論が展開されるとみられる。(東岡徹)
集団的自衛権行使は限定的 首相、自衛隊9条明記案巡り
安倍晋三首相は30日の衆院予算委員会で、安全保障法制で限定的な集団的自衛権の行使が可能になったとしたうえで、憲法9条1項・2項を残して自衛隊を明記しても、「フルスペックの集団的自衛権の行使は認められないのではないかと考えている」と述べた。自ら提案した自衛隊明記案で集団的自衛権の範囲が変わることはないとの考えを示したものだ。
衆院会派「無所属の会」の原口一博氏の質問に答えた。首相は憲法9条について「日本の平和と安全を担っている自衛隊の存在自体をしっかりと憲法に私は明記するべきであろうと考えている」と述べた。
原口氏は自衛隊を明記すれば「(制約がない)フルスペックの集団的自衛権の行使ができるのか」と質問。首相は「9条2項を変えるということになればフルスペックの集団的自衛権の行使を認めることも可能になると思う」としたものの、2項をそのまま残す自衛隊明記案では集団的自衛権の行使は限定的になるとの考えを示した。