韓国大統領府で10日、北朝鮮祖国平和統一委員会の李善権(リソングォン)委員長(左)から耳打ちされ、笑顔を見せる金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の実妹、金与正(キムヨジョン)氏=AP
北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長が10日、実妹の金与正(キムヨジョン)氏を通じ、文在寅(ムンジェイン)韓国大統領の訪朝を要請した。北朝鮮にとって、金与正氏の韓国派遣は「最高のカード」。その狙いは何か。北朝鮮の揺さぶりで米韓同盟はどうなるのか。(ソウル=牧野愛博)
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10日午前11時過ぎ、北朝鮮高位級代表団が韓国大統領府の一室に姿を現した。金与正氏は青色のファイルを大事に扱い、テーブルの上に置いた。
韓国メディアの映像分析によれば、ファイルには「朝鮮民主主義人民共和国 国務委員長」と表書きされていた。国務委員長は正恩氏の肩書の一つ。文氏に渡す正恩氏の親書だった。
大統領府によれば、親書には、南北関係改善を目指す正恩氏の考えが記されていた。金与正氏は口頭で、文氏の訪朝を促す正恩氏の要請を伝えた。具体的な時期には触れなかった。
脱北した元北朝鮮外交官は「外交上、口頭での伝達は親書よりもランクが低い。時期を示さないのは、南北関係が長く断絶するなか、解決すべき課題が残っているからだ。逆に言えばそれだけ北朝鮮を取り巻く状況は悪い。焦っている証拠だ」と語る。
米韓関係筋は「北朝鮮は、韓国を米国の攻撃に対するシールド(盾)にするつもりではないか」と語る。米軍は最近、核兵器を搭載できるB52戦略爆撃機6機やステルス性能を持つB2戦略爆撃機3機をグアムに前進配備した。
ソウルの情報関係筋によれば、…