「一票の格差」が最大1・98倍だった昨年10月の衆院選は投票価値の平等を定めた憲法に反するとして、弁護士グループが選挙無効を求めた訴訟の判決が31日、大阪、高松の2高裁と名古屋高裁金沢支部であった。いずれも「合憲」と判断し、請求を棄却した。
今回訴えていたのは升永英俊弁護士のグループ。全国14の高裁・支部に提訴しており、既に判決のあった福岡高裁那覇支部、仙台高裁秋田支部、東京高裁も「合憲」と判断している。 一票の格差をめぐっては、最大格差が2倍を超えていた2009、12、14年の衆院選について、最高裁が3回連続して「違憲状態」と判断。国会は昨年6月、小選挙区の定数を「0増6減」とし、19都道府県97選挙区の区割りを見直す改正公職選挙法を成立させた。この結果、14年衆院選で最大2・13倍だった格差は同1・98倍に縮小した。
判決で、大阪高裁(中本敏嗣裁判長)は法改正による0増6減などを「投票価値の格差是正の実現に向けた取り組み」と評価。格差2倍以上の選挙区が存在しなかったことを重視し、「法改正による区割りは合理性があり、国会に与えられた裁量権の範囲内で定められた」として「憲法に違反しない」と結論づけた。
高松高裁(石原稚也〈ちがや〉裁判長)も「格差が2倍以上の選挙区はなかった」と指摘。国会による是正を「合理性があり、区割りが憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったとは言えない」とした。
名古屋高裁金沢支部(内藤正之裁判長)は、都道府県に1議席ずつ割り振ることで人口が少ない地方に手厚く議席配分する「1人別枠方式」について言及。格差縮小で「実質的に解決され、違憲状態の瑕疵(かし)は解消された」と述べた。