ジャンプで着氷する宇野昌磨=17日、江陵アイスアリーナ、遠藤啓生撮影
フィギュアスケート男子の20歳の宇野昌磨(トヨタ自動車)は、かつて「跳べない選手」だった。
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男子のトップ選手には必須のトリプルアクセル(3回転半)ジャンプが、高校生になってもできない。1日に数十回跳ぶのですら大変なジャンプを、100回練習した時期もあった。
転機は高校2年生だった2014年。顔を合わせた先輩の無良崇人(27)=洋菓子のヒロタ=の助言がきっかけだった。「トーループがうまいから4回転を練習してみたら」。こだわっていたトリプルアクセルをあきらめ、気分転換に4回転トーループを練習すると、3カ月ほどで跳べた。焦りが消え、心に余裕ができた。
その年の10月、トリプルアクセルを初めて練習で成功。「もう跳べないんじゃないかと思ってずっと悩んでいた。後から跳び始めた人の方が早く跳べ、見ていてつらかった。でも、1回跳べたからと浮かれていたら意味がない」。体幹トレーニングを取り入れ、跳ぶための体作りもした。
憧れの羽生結弦(ANA)の存在も大きい。羽生が新しい4回転ジャンプに挑戦する姿を見て、負けじとジャンプを習得した。世界初の4回転フリップを成功させるなど、いまでは4種類の4回転ジャンプを跳ぶ。
小さい頃から指導する樋口美穂子コーチはいう。「皆に先を越されても、落ち込むことなくひたすら練習していた。芯が強い」
この日のフリー。3種類4回の4回転ジャンプに挑んだ。技術点では羽生を上回り、ショートプログラム3位から一つ順位を上げた。地道な努力と圧倒的な練習量で「跳べない選手」から「跳べる選手」になった宇野。羽生に次ぐ銀メダルに、「1、2位はうれしい。羽生選手は最大の目標で憧れ。いつまでも追いかけ続けたい」と目を輝かせた。(野田枝里子)