12日にあった団体のアイスダンスフリーで演技をする村元哉中、クリス・リード組=樫山晃生撮影
平昌五輪のフィギュアスケートは19日、アイスダンスのショートダンス(SD)があり、日本代表のクリス・リード(28)、村元哉中(かな)(24)組=木下グループ=は団体のSDを超える63・41点を出し、15位でフリーに進んだ。村元はシングルから転向して4年目で、五輪の舞台にたどり着いた。
この日のSDで、村元は冒頭のツイズルで少しバランスを崩したが、その後立て直し、生き生きとした表情で滑りきった。
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5歳のとき、現在はタイ代表のヘッドコーチをしている姉の小月(さつき)さん(27)と一緒に神戸市のリンクでスケートを始めた。「キラキラの衣装が着たかった」。1年でやめるはずが、のめり込んだ。12歳からは、宮原知子(関大)らを教える浜田美栄コーチ(58)に師事。高校まで通ったインターナショナルスクールは勉強が厳しかった。京都で練習していたころは、神戸市の自宅に帰るのに1時間半ほどかかった。夕食は母の智美さん(56)が運転する車の中で済ませ、深夜に帰宅してから宿題をすると朝までかかるときもあった。
姉妹で刺激しあって全日本選手権に出場するまで力をつけた。2010年から2年続けて全日本選手権で10位に。しかし、13年に小月さんが引退すると、「孤独だった」。練習に身が入らず、この年の全日本選手権は17位と落ち込んだ。選手層の厚い中で生き残る難しさも感じていた。「ジャンプが苦手で焦りもあり、楽しめなかった」
14年、転機がきた。もともとエッジワークに定評があり、アイスダンスをやらないかと誘われた。「気分転換に」とトライアウトを受けると、魅力に引きつけられた。「2人で滑ると心強い。スピードもすごくて、感じる風が気持ちよかった」。15年4月、姉のキャシーさん(30)と組んで五輪に2回出場したクリスからオファーがあり、結成を決めた。
五輪を意識するようになったのは、クリスと組んでから。レベルの差を埋めようと追い込んだ。クリスがけがをしていた時期は1人で練習。下半身強化のためほぼ毎日筋力トレーニングをし、あらゆる動物性の食品を避ける「ビーガン」になり、体形の美しさに気を配るようになった。
昨年の全日本選手権で3連覇を達成。今年1月の四大陸選手権では3位になり、同種目の日本勢による国際スケート連盟選手権大会で初めてのメダル獲得を果たした。初の五輪の舞台で、団体に続いてSDでも緊張感を乗り越え、フリーに勢いをつないだ。(橋本佳奈)