滑降で途中棄権となった狩野亮=ロイター
前回王者にとって、悔しい滑り出しとなった。
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特集:平昌パラリンピック
10日に競技が始まった平昌パラリンピック。初日から登場した、アルペン男子座位の狩野亮(31)=マルハン=は高速系と技術系に種目が分かれるこの競技で、高速系のスペシャリストだ。得意の滑降が今大会最初のレースだったが、スタート直後にバランスを崩し、途中棄権となった。
26選手が出場したレース。13番目に出た狩野は急斜面のターンを切れずにレースを終えた。「高速系は頭を使う。滑るラインを一つ間違えば、1秒や2秒遅れてしまうから」と話していたように、スピードとリスクは表裏一体。よりスピードに乗れるラインを攻めた結果の途中棄権だった。
旗門と旗門の間が広く、時には数十メートルのジャンプをしながら高低差約650メートル、全長約2300メートルのコースを一気に滑り下りるこの種目で、4年前のソチ大会は金メダルを獲得した。スキー仲間からは「スピードスター」と呼ばれる。
高速ターンの技術が求められるスーパー大回転も合わせて金メダル二つのソチ大会と比べて、今回はチェアスキーのサスペンションを3倍も硬くした。
足元が硬い分だけ体に伝わる衝撃も大きいが、車いすでの走り込みや陸上トレーニングを増やし、強い衝撃でもチェアを操れる体をつくり上げてきた。
競技を始めたきっかけは1998年の長野パラリンピック。障害を抱えながら雪上を疾走する選手の姿をみて刺激を受けた。「今度は自分が、子どもたちが憧れてくれるような存在になりたい」。誰よりも速く風を切る目標は、3連覇がかかる11日のスーパー大回転に持ち越された。(波戸健一)