5日にあったJFLの記者会見で開幕戦で対戦する奈良クラブの薩川了洋監督(左)と握手するテゲバジャーロ宮崎の石崎信弘監督
サッカー・Jリーグで最多となる608試合(J1で152試合、J2で456試合)の指揮数を誇る石崎信弘氏(59)が今季、「テゲバジャーロ宮崎」を率いてアマチュア最高峰のJFL(日本フットボールリーグ)に参戦する。「どこのカテゴリーでも、サッカーができれば、それで幸せ」。変わらぬ思いで、Jリーグを目指す選手とボールを追っている。
11日の開幕を控え、5日に東京都内でJFLの記者会見が開かれた。石崎監督は「1年目からでも、優勝を目指して戦っていきます」。テゲバジャーロ宮崎は、宮崎市内を拠点に将来的なJリーグ入りを目指すクラブ。プロは数人で、ほとんどがアマチュアだ。
「わし、選手を育てたいいうことが一番のベース」。広島出身の石崎監督は、1995年にJ2山形の前身、NEC山形で監督業をはじめた。厳しい練習で若手を鍛える指導方針で、チームを強化。2006年に柏、11年に札幌、14年に山形をJ2からJ1に上げた「昇格請負人」だ。
昨季、山形を退任したばかりの石崎監督に、九州リーグにいたテゲバジャーロ宮崎からのオファーが届いた。J1から数えれば5部にあたるリーグだったが、「サッカーをやることも、ルールも一緒」と、現場にこだわり、引き受けた。特定の練習場はなく、時に車で1時間以上かかるグラウンドまで行くことも。それでも、初めて監督を務めたころの山形で同じような経験をしたといい、「苦じゃない」という。
「練習でできないことは、試合でできない。練習で手抜いて、上手になったやつはいない」。選手に語る言葉は、プロでもアマチュアでも変わらない。シーズン中でも、2部練習をするのが石崎流。メインの午前練習のあとはアルバイトなどの仕事に行く選手もいるため、午後は都合のつく選手だけで取り組む。
クラブの柳田和洋代表は「最後まで走りきれる部分は、本当にチームの強みになった」。競り合いで激しく当たったり、全員で守備に走り回ったりするハードワークを持ち味に、九州リーグ優勝、JFL昇格を争う全国地域チャンピオンズリーグで準優勝し、JFL昇格という目標を1年で達成した。石崎監督は「わし、もっとるじゃろ」と笑う。
クラブはスタジアムや財政面などが整わず、準加盟に当たる「Jリーグ百年構想クラブ」への申請もこれから。そのため、今季JFLで優勝してもJ3には参入できない。それでも、モチベーションに影響はないと石崎監督はきっぱりと言った。「サッカーをやって、選手が上手になって、チームが強くなればいい」
テゲバジャーロ宮崎は11日の開幕戦で、奈良クラブと敵地で対戦する。(勝見壮史)