愛知県の農業産出額は全国上位
プチベールにカリフローレ、セイロンウリ……。名古屋市と周辺で珍しい品種の野菜づくりに取り組む農家が増えてきた。規模の小さい農家でも、消費者に目新しさをアピールできることが背景にあるようだ。
「甘くて、おひたしでも天ぷらにしてもおいしい」。愛知県日進市の農業、笠井明美さん(65)の畑では、大根やカブと並んでプチベールが育つ。芽キャベツとケールを組み合わせた品種で、ビタミンや鉄分など栄養豊富。約10年前から栽培し、冬の収穫期には50キロほど出荷する。「他の野菜を育てた経験もあってすぐに収穫できた。達成感がある」。店頭には100グラム200円程度で並ぶ。
地元の名産品をつくろうと、名古屋近郊を管轄するJAあいち尾東がプチベールに目を付けた。「収益性が高く、軽いので高齢の農家でも取り組める」(営農指導課)。栄養価も高く、消費者の健康志向に合っていると考えた。ほかにも、スティック状のカリフラワー「カリフローレ」、ブロッコリーとケールを掛け合わせた「アレッタ」といった「新野菜」に力を入れる。ただ生産量が少なく、取り扱いは地元の直売所が中心だ。
名古屋市天白区では、10人ほどの生産者が3年前から「セイロンウリ」を育てている。スリランカなどで栽培され、長さ30~40センチほどになる。近隣の大学教授から紹介されたのがきっかけで、今夏は地元スーパーで「セイロンウリのかき揚げ」のような総菜の販売も企画している。
農林水産省の統計によると、愛知県の2015年の農業産出額は3063億円で全国8位。指折りの農業県だが、大規模な農地のある三河地区が過半を占める。商業集積や宅地開発の進む名古屋地区の農家は、生産量が少なくても、新野菜の物珍しさで消費者を引きつけるねらいだ。JA天白信用の担当者は「宅地化で農地が減っている。それでも新野菜の生産で地域住民との交流が深まり、良い農産物があると知ってもらえたら」と話す。(高橋諒子)