一夜に約10万人が亡くなったとされる東京大空襲から73年を迎えた10日、東京都慰霊堂(墨田区)で犠牲者を追悼する法要があった。遺族や都、区の代表者ら約600人が参列し、犠牲者に祈りを捧げた。秋篠宮ご夫妻も参列し、焼香した。
慰霊堂には、東京大空襲などの空襲や1923年の関東大震災で亡くなった計約16万3千人の遺骨が安置され、都慰霊協会が毎年3月と9月に法要を営んでいる。参列した小池百合子都知事は「私たちには戦争の悲惨さを決して風化させることなく次の世代へ語り継ぎ、平和で安全な世界を守る責任がある」と追悼の言葉を述べた。
大空襲は、第2次世界大戦末期の1945年3月10日未明にあった。米軍のB29爆撃機約300機が東京上空に飛来し、約33万発の焼夷弾(しょういだん)を都東部の下町一帯に投下。住宅地などが一夜にして焼け野原となり、戦闘員ではない多数の住民が犠牲となった。米軍による日本の都市に対する「絨毯(じゅうたん)爆撃」の始まりで、これ以降、多くの都市で米軍による大規模な空襲が続いた。
10日は朝から多くの人が都慰霊堂を訪れ、焼香をしたり、手を合わせたりして犠牲者を追悼した。
妻を亡くした千葉県船橋市の杉浦正男さん(103)は「戦前は自由なんてなかった。平和で長生きできたのは憲法9条のおかげ。今の政府は危なっかしい。9条を守りたい。我々の宝物だから」と話した。疎開先にいて母と姉2人、弟の死を知った東京都江東区の小久保宏子さん(83)は「遺体もなく、法要に来るたびに、戦火に焼かれ、近所の川にでも飛び込んで苦しんだのかなと考える。戦争で苦労して死んだことを、いまの人は想像もできないと思う」と語った。(斉藤寛子)