スノーボードクロス男子大腿障害に出場した小栗大地=竹谷俊之撮影
平昌パラリンピックは新競技のスノーボードが12日に開始。最初の種目は、起伏やジャンプ台のあるコースで速さを競う「スノーボードクロス」で、午前中に予選があった。男子下肢障害の成田緑夢(ぐりむ)(24)=近畿医療専門学校=は予選1位で決勝に進出。男子大腿(だいたい)障害では元プロスノーボーダーの小栗大地(37)=三進化学工業=が7位、夏のリオデジャネイロ大会で走り幅跳びで銀メダルを獲得した山本篤(35)=新日本住設=が12位で決勝に進んだ。
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小栗は32歳の時、勤め先の事故で右足を切断した。重さ数トンの鉄板が足に落下。救急車を待つ間、頭に浮かんだのはスノーボードだった。「義足をつけてできるかなって」
25歳でプロに。用具を提供してくれるスポンサーはついたが、競技だけでは食べられなかった。パチンコ店でアルバイトをしながらの生活。30歳で引退を決め、金属加工会社に就職した矢先の悲劇だった。
事故から4カ月後、右足に義足をつけてスノーボードに乗った。ゲレンデを転ばずに滑走できた。「また一から、スノーボードに挑戦できるのは面白いなってわくわくした」。ちょうどその頃、ソチパラリンピックで、アルペンスキーの1種目としてスノーボードが初めて実施されていた。新たな夢ができた。
小栗に影響を与えたパラ選手がいる。今大会にアルペンスキーで出場している三沢拓(ひらく)(30)=SMBC日興証券。右足1本で急斜面を滑る姿を、小栗はプロになる前からゲレンデで何度も見て刺激を受けていた。「拓の滑りを知っていたから、足が切れた時も冷静でいられたと思う」
小栗には、パラ選手としてのこだわりがある。ウェアをひざ上で切り、必ず義足をむき出しにして滑るのだ。「僕が拓から教えてもらったように、足がなくても何でもできるって色々な人に知ってもらいたい」
決勝は12日午後に行われる。(波戸健一)