今季のコンチネンタル杯を終えて帰国した村上優空(右から)、宮崎彩音、山田和由コーチ
平昌五輪で渡部暁斗(北野建設)が銀メダルを獲得したノルディックスキー複合競技に、女子種目があるのを知っていますか――。海外を転戦するコンチネンタル杯が今季から始まり、15歳の宮崎彩音(あやね)(長野・野沢温泉中)が日本勢初優勝を飾り、総合で2位に入った。国際スキー連盟は4年後の北京五輪からの正式採用をめざしており、全日本スキー連盟(SAJ)の正木啓三複合部長は「採用されれば五輪出場に近いかもしれない」と競技人口の拡大に力を入れる。
同杯ではノーマルヒルのジャンプ台を飛び、距離は5キロ滑る。今季は6戦予定されていたが、2戦が中止となり、4戦で総合優勝を争った。宮崎は1月21日の第2戦(ノルウェー)で得意の前半ジャンプで首位に立ち、そのまま逃げ切って記念の1勝を手にした。その他の3戦は2位2回、3位1回。「表彰台にたてば疲れが吹き飛ぶ。それが魅力」と語る。
今季から世界ジュニア選手権でもテストイベントとして行われ、出場者は31人。ドイツなどではナショナルチームが編成されていたという。SAJの山田和由コーチは「女子選手は筋力があるわけではなく、ジャンプか、距離のどちらかが強い選手が勝つ。両方ともたけている選手はまだいない」と見る。
SAJも五輪採用をにらみ、今季から5人を選抜して強化してきた。ただ、日本の競技人口は中高生を中心に20人ほどで、公開競技で行われる今月の全日本選手権のエントリーは中高生の13人だけだ。中学で複合に取り組んでも高校進学時に競技環境が乏しくてジャンプに絞る選手もいる、という。
複合女子は五輪や世界選手権、ワールドカップへの道がまだ開けていない。競技環境も十分とはいえない。それでも、男女平等な大会への機運は少しずつ高まっている。今春、高校に進学して競技を続ける宮崎は、平昌五輪での渡部暁の活躍に刺激を受けたという。「五輪種目になったらメダルをめざして頑張りたい」。総合6位の村上優空(ゆら)(盛岡中央高)も「国際大会ができてモチベーションが上がった」と、今春から大学に進んで競技を続ける。いつか、五輪種目になることを信じて。(笠井正基)