スノーボード男子バンクドスラローム下肢障害で金メダルを獲得し、笑顔を見せる成田緑夢=16日、平昌オリンピックプラザ、加藤諒撮影
大けがから5年、スノーボードの成田緑夢(ぐりむ)(24)が16日、男子バンクドスラローム下肢障害で金メダルをつかみ取った。「障害を持つ人たちの光になりたい」。強い思いで強豪を破った。
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レース後の表彰式。成田の両脇には、近年の世界王者たちが並んだ。2位のエバン・ストロング(31)=米=はソチ大会金メダリスト、3位のマッティ・スールハマリ(31)=フィンランド=は12日にあったスノーボードクロスで金。「この2人を倒して今度は僕が勝てた。もう完璧です」。2人とハイタッチを交わした。
19歳の時、トランポリン練習中の大けがで、左ひざから下の感覚を失った。成田家はスノーボード一家。環境を変えようと、家を出た。自力で復活への努力を重ねてきた。
競技を始めたのは3年前。最初は近寄りがたかったトップ選手とも、遠征を重ねて親しくなった。特にストロングとは競技への考え方も合った。「障害があっても、スポーツができることを知って欲しい」。メダル以上に大事な価値観を共有し、競い合ってきた。
この日、会場には家族もかけつけた。母の桂(かつら)さんは金メダルが決まると声を震わせ「けがをした時は命すら危ないといわれたので、雪の上に立ってくれているだけでうれしい」。元五輪代表で兄の童夢(どうむ)さん(32)も「見事に再起し、勝ち切ったところは負けたって感じ。誇らしいです」と話した。
金メダルを首にかけられ、成田は言った。「過去にもたくさんの人が医者からもう歩けないとかスポーツできないと言われていると思うんだけど、僕は金メダルを取れた。ちょっとした光にもなれたら、僕はそれが一番うれしいです」(高野遼、西村奈緒美)