輸入車インプレッション@JAIA試乗会(上) 日本自動車輸入組合(JAIA)主催の輸入車試乗会が2月初旬、神奈川県大磯町であった。2日間にわたって記者が試乗した計12台のレビューを、「独断と偏見」による採点を交えて報告する。初回のテーマは「非SUVという選択肢」。街に増殖するSUVに飽きた読者に薦めたい、高級外車の正統派5台を紹介する(金額はオプションを除いた税込み価格。星5つが満点)。 アストンマーティンDB11V8 映画「007シリーズ」のボンドカーとして知られた英国の名門ブランドも、独メルセデスAMGとの提携ですっかりモダンになった。古典的なロングノーズ・ショートデッキに現代的な鋭利なディテールが混じった外観は、マットな感じのグレーという車体色も相まって、まるで戦闘機のよう。車体を前後に貫通する太いセンターコンソールと、内側にせり出すサイドシルに挟まれて、肉厚なバケットシートに埋もれるように座り込む。ドライバーの包まれ感は、昔ながらのスーパーカーそのもの。インパネのクロム加飾に英国車らしさが辛うじて残るが、画角の大きいナビゲーション画面やタッチパネルなど、メルセデス流の現代風デバイスが整然と並ぶ。運転感覚も現代的。ハイテク電子制御による四輪駆動で、常識的な速度で走る分には極めて乗りやすい。大昔の後輪駆動スーパーカーのような、急加速するとねずみ花火のようにどこかに飛んでいきそうな危なっかしさは皆無だ。(2278万円) 【英国車らしさ】★★ 【ドイツ車っぽさ】★★★★ アウディRS5クーペ 往年のアメリカの大排気量マッスルカーを思わせる、真っ赤なカラーリングの大柄な2ドアクーペ。一方で、エアロパーツは小ぶりで控えめだ。抑制のきいたリアスポイラーやエンブレムといった演出はどことなく、1980~90年代の国産高級セダンのGTグレードにも似ている。トヨタ・チェイサーGTツインターボや日産ローレル・クラブSターボといったクルマが今も残って進化し続けていたなら、ちょうどこんな感じになっていたかもしれない。剛性の高いボディーとレスポンスの良い2.9リッターV6ターボの組み合わせは、アウディらしいソツのない仕上がり。収納の少なさ以外は、内装の質感の高さも不満はない。それだけに、スポーティーな乗り味の演出が過剰で、ちょっとわざとらしい感じがするのは残念。巨大な20インチタイヤのせいか、乗り心地も硬い。最上級スポーツモデルという位置づけゆえにやむを得ないのかもしれないが、長く乗っていると疲れる。せめて、運転モードをコンフォートに切り替えたら、もっと穏やかな乗り味になるようにセッティングしてほしい。(1257万円) 【分かりやすい格好良さ】★★★★★ 【日常の足としての使い勝手】★★ BMW540iMスポーツ 後部座席向けのヘッドレストモニターまで付く、後席でもくつろげる高級サルーンながら、運転するとスポーティー感も十分な万能選手。運転席の着座位置は低く、足を前に投げ出す姿勢を取らされる。蹴るようにブレーキペダルを踏めるドライビングポジションで、太くて直径の小さいステアリングを握ると、スポーツカー気分に気持ちも高ぶる。いまや希少な直列6気筒エンジンは、相変わらず滑らかに回る。ただ、加速フィールや吸排気音の味付けはおとなしめ。代替わりのたびに大きくなる5シリーズの車体も、山坂道で振り回すには重たくて上品になりすぎた。リニアでダイレクトなステアフィールや、クリアでメカニカルなエンジン回転音といった、かつてのBMWらしい快活でスポーティーな演出が、もうちょっと欲しい。(1031万円) 【万能選手ぶり】★★★★ 【BMWらしさ】★★ マセラティ・ギブリSグランスポーツ 近年めったに見なくなったスモーカー向けシガーソケットを頑固に備え付ける、死語になりつつある「ちょい悪オヤジ」御用達のイタリアン。気難しそうな外観に身構えるが、3リッターV6の運転フィールは意外と普通。一見やんちゃそうだが紳士的な伊達(だて)男といったところか。赤いステッチとカーボン調素材、メッキをちりばめた派手な内装コーディネートの一方で、灯火類のスイッチやBピラーの内張などに散見される、大衆車のような安っぽい樹脂素材は残念。コストを抑えつつチープに見えない工夫は、国内メーカーに分がある。(1093万円) 【乗りやすさ】★★★ 【内装の質感】★★ フォルクスワーゲン・アルテオンRライン4MOTIONアドバンス トヨタ・カリーナEDやマツダ・ペルソナなど、日本で80年代後半にブームだった4ドアハードトップ。2004年に発表されたメルセデス・ベンツCLSのヒットに触発された他の高級ブランドが追随して、にわかにドイツ車の人気カテゴリーとなった。フォルクスワーゲン(VW)各車に共通するインパネのデザインは、昔のメルセデスと同じように、他のモデルから乗り換えても操作に迷わない。逆に言うと新鮮味はない。平べったいクーペスタイルだが、実はリアガラスごと開くゲートを持つファストバック。車体の大きさもあり剛性感はゴルフに一歩譲るものの、荷室は広くて使い勝手が良い。走行モードをスポーツにすると、ゴルフRばりの野太いエキゾースト音を響かせながらも、挙動はジェントルなままだ。そんな優等生ぶりが、いかにもVWらしい。ただ、良くも悪くも、今までのVWのラインナップから想像する範囲の仕上がり。そろそろ新しい提案が欲しい。(599万円) 【優等生ぶり】★★★★★ 【新しさ】★★ (北林慎也) |
非SUVという選択肢 輸入車試乗会レビュー(上)
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