宮城県南三陸町の自宅で寄贈されたピアノを弾く近藤るいさん(被災地へピアノをとどける会提供)
寄付を募って東日本大震災の被災地にピアノを届けてきた市民団体「被災地へピアノをとどける会」(事務局仙台市)が活動を終了することを決めた。支援を希望する人の受け付けはすでに打ち切っており、同会は「支援活動は終息の時期に来ていると判断した」としている。
同会は2011年6月、仙台フィルハーモニー管弦楽団の団員や仙台市在住の音楽家らの呼びかけで発足。被災してピアノを失った学校や公共施設、避難生活を送る音楽家や音楽を学ぶ子どもらを支援してきた。
ピアノは全国の法人や個人から寄贈されたほか、寄付金で購入したものなど計513台(18年3月8日現在)に上った。寄付金として、ベルギー在住の音楽家らがチャリティー演奏会で集めた収益が届いたこともあった。
在校生の多くが自宅を津波で流された岩手県釜石市の県立釜石高校には14年12月、新品のグランドピアノが届いた。この年の秋に大阪市で開かれた音楽イベント「中之島まるごとフェスティバル」(朝日新聞社など主催)で集まった寄付金などで購入したもので、現在は体育館で誰でも演奏できる状態になっている。
同校で音楽を担当する山本友里恵教諭(52)は「合唱や吹奏楽のイベントで市民にも広く活用され、音楽の輪が広がっています」と支援に感謝した。
宮城県南三陸町出身の近藤るいさん(20)は高校3年生だった15年10月、アップライトピアノを譲り受けた。被災当時は中学1年生。津波で学校の先生や同級生が犠牲になり、通っていた町内のピアノ教室は流された。一時はピアノから離れようと考えたこともあったが、高校卒業後に静岡県浜松市にある調律師の養成学校に進学。現在は京都市のピアノ修理会社に就職し、新米調律師としての一歩を踏み出した。「寄贈されたピアノは宝物。今も実家に帰省したら、自分で調律して大切に使っています」と近藤さんは話す。
寄付金は今年6月9日まで受け付けている。問い合わせは同会(022・264・1846)。(辻村周次郎)