シリアの首都ダマスカス近郊にある反体制派支配地域「東グータ地区」へのアサド政権軍による集中空爆により400人超の犠牲が出ている問題で、国連安全保障理事会は23日、30日間の停戦決議案について協議したが、採決には至らなかった。同地区では生活物資や医療品の不足が深刻になっている。
停戦案の調整は非常任理事国のスウェーデンとクウェートが主導。停戦中に人道物資の搬入や負傷者の避難を進める狙い。23日に採決予定だったが、シリア政府を支えるロシアなどとの修正協議が難航。安保理の議長国は同日夕、24日正午(日本時間25日午前2時)に採決すると発表した。
スウェーデンのスコーグ国連大使は「シリアの人々の苦しみを和らげる決議案を採択できていないことに非常にいらだっている」と記者団に述べた。全会一致の採択をめざしているが、「停戦」の定義で溝が残っている模様だ。
米国のヘイリー国連大使は「信じられない。ロシアが人道物資の搬入に道を開く停戦案の採決を立ち往生させた。あと何人が犠牲になるのか」とツイッターで発信し、名指しでロシアを非難した。
常任理事国のロシアは拒否権を持ち、繰り返しシリア関連の決議案を廃案に追い込んできた。安保理はロシアが賛成できる案の作成を急いでいる。(ニューヨーク=金成隆一)
独仏首脳、プーチン氏に書簡
シリアの首都ダマスカス近郊の「東グータ地区」でアサド政権軍の攻撃が続くなか、ドイツのメルケル首相とフランスのマクロン大統領は23日、ロシアのプーチン大統領に国連安保理で議論されている停戦決議案を支持するよう求める書簡を共同で送った。
書簡は「多数の子どもを含む、市民への意図的な無差別攻撃を最大限の強い言葉で非難する」とし、「ロシアに責任を負うよう求める」と訴えた。フランス政府関係者によると、マクロン氏はこの日、ブリュッセルで開かれた非公式の欧州連合(EU)首脳会議でも決議案への支持を求めた。
東グータ地区は反体制派の支配地域で、2月に入りアサド政権軍が激しい攻撃をしている。政権を支援するロシア軍も空爆しているとの情報もある。国際NGOによると破壊された医療施設も少なくなく、国連のグテーレス事務総長は、同地区の状況を「地上の地獄に等しい」と表現。安保理は、人道支援を目的にした30日間の停戦を求める決議案を議論している。(ブリュッセル=津阪直樹)