136億年前に宇宙に誕生した最初の恒星のイメージ(米国立科学財団など提供)
宇宙誕生から1億8千万年たった136億年前までに最初の恒星群が生まれた痕跡をとらえたと、米アリゾナ州立大などの国際研究チームが英科学誌ネイチャーに発表した。
特集:宇宙・天文
研究チームは、人がほとんど住んでいないオーストラリア西部の砂漠に、ダイニングテーブルほどの特殊な機器を設置。宇宙空間に漂う水素ガスが、宇宙誕生から1億8千万年後までに恒星から出てきた紫外線で性質が変化して、特定の波長の電波を吸収しているのを観測した。星を形成するガスの温度が予想より大幅に低かったこともわかった。
最初の恒星をとらえる試みは世界中で研究されていたが、非常に弱い光を直接とらえるのは極めて困難。間接的に電波をとらえる方法も、最初の恒星からの電波が地球に届くころにはFMラジオ放送にも使われる帯域になるので、人が使う電波や地球の大気、電離層などによる雑音を取り除くのが難しかった。
研究成果はノーベル賞級ともされ、国立天文台の赤堀卓也・特任研究員は「特定の波長に限定することで小さな装置で大きな成果をあげたことはすばらしい。今後様々な観測で成果の検証が進むだろう」と話す。(田中誠士)
「天文学辞典」ネットで公開
ダークマター(暗黒物質)や重力波など、ニュースに登場する天文用語や新たな現象を日本天文学会の専門家らが解説した「天文学辞典」(
http://astro-dic.jp/
)がインターネットで無料で公開された。
日本評論社の「天文学辞典」に掲載された天体や観測装置、人名など約3千項目をもとに、約千項目で図や動画を追加した。中高生でも理解できるように記述にも配慮したという。国立天文台の縣(あがた)秀彦さんは「天文学は新たな発見などで、めまぐるしく用語が出てくるので、専門家が責任を持って更新していく。天文に興味がある人たちに幅広く使ってほしい」と話している。