輸入車インプレッション@JAIA試乗会(中)
日本自動車輸入組合(JAIA)主催の輸入車試乗会が2月初旬、神奈川県大磯町であった。2日間にわたって記者が試乗した計12台のレビューを、「独断と偏見」による採点を交えて報告する。第2回のテーマは「電気仕掛けのドイツ車たち」。世界初のガソリンエンジン車を発明した自動車大国は、将来のEV(電気自動車)シフトに適応できるのか? 代表的な3ブランドのPHV(プラグインハイブリッド車)とEVに乗って探った(金額はオプションを除いた税込み価格。星5つが満点)。
(上)非SUVという選択肢
フォルクスワーゲンeゴルフ
世界的ロングセラー車の中身を、そっくりそのままEV化した。見た目の違和感はもちろん皆無。既存ガソリン車からの買い替えの心理的ハードルも低いだろう。大きなバッテリーを積むため、車重はガソリンエンジン車に比べて200キロほど重いが、モーター独特の高出力によって動力性能は十分。アクセルを踏み込んでも、ジェット機の離陸時のような「キュイーン」という電気音と風切り音しか聞こえないため、いつの間にか結構なスピードが出ていたりする。極めて完成度の高い7代目ゴルフがベースなだけに、内装の仕上がりもソツがないが、それが不満な点でもある。あまりにゴルフそのままのため、新鮮味が乏しく、最先端のエコカーに乗っているというワクワク感も薄い。(499万円)
【先進性】★★★★★
【ワクワク感】★★
ポルシェ・パナメーラ4Eハイブリッド
2016年の全面改良で2代目となったポルシェの4ドアセダン。先代に比べると、外観はよりポルシェらしさを強めた。ドアミラーの視界を遮るリアフェンダーのふくらみや薄型のテールランプ、異形ヘッドライトなど、イメージリーダーである「911」のイメージが色濃い。銘柄指定でポルシェを買うセレブにとっては、セダンといえどもポルシェっぽく見えることが重要なのだろう。ポルシェ風味の濃さは外観にとどまらない。過剰なぐらい高い剛性にはうならされた。どんなにうねった道や凸凹道を走っても、車内のどこからも異音が聞こえない。車体はまるで、比重の重い削り出し金属の塊のよう。サスペンションのバネとタイヤだけが、ドライバーと路面を仲立ちして静かにせわしなく動き、確かな仕事をしている。EVモードで走ると風切り音すら聞こえないほど静かだが、アクセルを踏み込んでエンジン回転を上げると野太い排気音をちゃんと聞かせてくれるのも、スポーツカーらしい演出。ただ、回生ブレーキのタッチには不満。効きは良いが、昔のトヨタ・プリウスのように不自然な感覚が気になる。また、メーターパネルの真ん中にある大きなアナログ式の回転計も、眺めているとちょっと滑稽。EV走行時にエンジン回転数が「0」を示したまま車窓の風景が後ろに流れていくのは、止まっているエスカレーターの階段を上り下りするのに似た気持ち悪さがある。旧来のスポーツカーの様式と電気モーター駆動のミスマッチ感は、世界中のスポーツカーブランドがこれから直面する問題だろう。(1436万円)
【ポルシェらしさ】★★★★★
【エコでも楽しい】★★★★
メルセデス・ベンツE350eアバンギャルドスポーツ
なめらかな9速ATとモーター駆動の組み合わせによるスムーズな加減速は、さすがメルセデス。ハンドルを握っていて刺激が少ない一方で、不安もない。ただ、インパネやコンソール周りをスタイリッシュに見せるための過度のボタン排除や電子化には不満がある。車両制御など多くの操作系をディスプレー表示やタッチパネルに寄せた結果、操作デバイスが車内各所に分散してしまい、覚えるまで一苦労だ。エアコンの温度調整すら直感的にできない。また、コラム右側から生えるシフトレバーがウィンカーレバーみたいに貧弱なのもいただけない。駐停車や発進時の誤操作を招かないためにも、シフトノブは誰の目にも分かりやすい場所にあるべきだと思う。危険回避の急ハンドル時などの姿勢制御に定評があり、安全優先にこだわるメルセデスなだけに、操作系にも配慮を求めたい。(811万円)
【自然な運転感覚】★★★★
【操作系の分かりやすさ】★★
(北林慎也)