ビットコインなどの仮想通貨を取引する個人アカウントが乗っ取られ、不正送金される被害が昨年1年間に149件確認されたと警察庁が22日発表した。被害総額は約6億6240万円相当に上る。昨年5月以降に仮想通貨の不正送金が急増したため、警察庁が年間の被害状況を初めてまとめた。
警察庁によると、仮想通貨の利用者が交換業者から発行されたアカウントにログインするためのIDとパスワードが何らかの方法で盗み取られ、別のアカウントなどに無断で送金される被害が主なケース。昨年4月に7件、5月に19件、6月に41件と続いた。その後は被害は沈静化したが、11月以降に再び増加に転じて12月には25件あった。
昨年確認された被害149件のうち、8割に当たる122件では被害を防ぐために有効な「2段階認証」が利用されていなかった。警察庁は被害にあわないために、OSを最新の状態に更新するほか、2段階認証の活用を呼びかけている。
一方、インターネットバンキングの利用者を狙った不正送金の昨年の被害は425件だった。被害がピークだった2014年の4分の1以下に減少。被害額も昨年は約10億8100万円とピーク時の15年の3分の1となった。ワンタイムパスワードの導入など金融機関側が対策を強化したためとみられる。警察庁は、仮想通貨に狙いがシフトしている可能性があるとみて警戒を強めている。
仮想通貨をめぐっては今年1月にも、交換業者「コインチェック」から顧客の仮想通貨NEM(ネム)約580億円分が流出した。(浦野直樹)