山梨県の中央自動車道笹子トンネルで2012年12月に天井板が崩落し、9人が死亡した事故で、甲府地検は23日、業務上過失致死傷容疑で書類送検された中日本高速道路(名古屋市)の金子剛一元社長ら8人全員を不起訴(嫌疑不十分)にし、発表した。
8人は、道路を管理する中日本高速と保守・点検する子会社の中日本ハイウェイ・エンジニアリング東京(東京都)のいずれも当時の役員4人、点検監督者2人、作業責任者2人。山梨県警は昨年11月、事故直前の点検の際、両社が当初計画を変更してハンマーでの打音検査をせず、天井板をつり下げるボルトの耐力低下を見逃した疑いがあるとして書類送検した。9人が死亡、3人が負傷した。
甲府地検は、仮に足場を組んで点検を徹底していたとしても、当時の技術水準などを考慮すると天井板の崩落を具体的に予見することは困難だったと判断した。
また、甲府地検は学者らのグループが業務上過失致死傷容疑で告発した中日本高速の元役員2人についても嫌疑不十分で不起訴とした。予定されていた天井板の撤去工事を実施しなかったとして告発されたが、「崩落の危険性についての認識はなかった」と判断した。
事故の遺族は「残念な結果となった。9人もの犠牲者を出した重大事故で、誰の責任も問えないのは司法の限界を示すもの」とコメントを発表。中日本高速広報室は「改めて事故で亡くなられた方々に心からおわび申し上げます」とのコメントを出した。(古賀智子、野口憲太)