野村不動産への特別指導をめぐる経緯と疑問
野村不動産への特別指導の経緯を明かすことをかたくなに拒んできた厚生労働省。その説明にほころびが出始めた。同社への是正勧告を東京労働局は公表していないと説明してきたのに、4日に国会に提出された会見録には、「是正勧告を行っています」という勝田(かつだ)智明局長の発言がはっきりと刻まれていた。
会見録に書かれた東京労働局長と記者との主なやりとり
野党はなぜ、東京労働局長の記者会見で野村不動産に対する是正勧告への言及があったかどうかにこだわるのか。
2016年9月、野村不動産の50代の男性社員が過労自殺し、特別指導の公表と同じ昨年12月26日に労災認定された。東京労働局が同社の労働実態の調査を始めたきっかけは、男性の遺族が昨春に出した労災申請だった。朝日新聞は3月4日、こうした事実を初めて報じた。
是正勧告の公表を認めると、そのきっかけに社員の過労自殺があり、過労自殺や是正勧告について加藤勝信厚生労働相に報告していたかどうかも明らかにするよう迫られる。加藤氏は3月5日、特別指導の公表時点で過労自殺の事実を知らなかったと取れる内容の国会答弁をしており、この答弁と齟齬(そご)をきたさないように、是正勧告の公表を伏せているのではないか――。野党議員はこうした疑念を深め、追及を続けてきた。
勝田氏は昨年12月25日、裁量労働制を違法適用したとして、同社の宮嶋誠一社長を呼んで特別指導。翌26日に記者会見で公表した。裁量労働制の対象拡大を含む働き方改革関連法案の成立をめざしていた今国会の開会直前だった。
厚労省は勝田氏による宮嶋社長への指導と、その事実の公表を合わせて「特別指導」と呼んでいる。特別指導は電通に続いて過去2例目で、記者会見での公表は初めてだった。特別指導の手続きを定めた規定は厚労省内に存在せず、局長の判断で行われたという。決裁文書も作られていない。
2月20日の衆院予算委員会で…