第1局で佐藤天彦名人(左)に勝ち、感想戦に臨む羽生善治竜王=2018年4月12日午後8時41分、東京都文京区のホテル椿山荘東京、迫和義撮影
将棋名人戦第1局は、羽生(はぶ)善治(よしはる)挑戦者(47)が佐藤天彦(あまひこ)名人(30)との熱戦を制し、名人復位と獲得タイトル通算100期達成へ向けて幸先の良い勝利を収めた。
羽生竜王が第1局を制し、通算1400勝 将棋名人戦
名人戦のタイムラインはこちら
終局直後の両対局者への一問一答から、要旨を紹介する。
【勝利した羽生挑戦者】
--横歩取りから激しい戦いになったが、予想通り?
「最近、同じ将棋を指して、(21手目)▲2六飛もあるんじゃないか、と思ってたんで……。ちょっと、やってみたんですが……。ただ、本譜の展開はあんまり考えてはなかったです」
--1日目から、これだけの激しい戦いは珍しいと思うんですが、ある程度は覚悟されていた?
「(32手目)△8三歩と打たれた局面で、その時の対応が難しかったんで……。先手としては、どうなのかな~、と思いながら、やっていました」
--封じ手の局面は? (佐藤名人が封じていた38手目)△3八歩は、予想していた手?
「手が広いところなので、何をやられるか、まったく見当がつかなかったんですけど。まあ、まあ、そのような手が、どこかであるかな~、とは思ってました」
--今日の昼食休憩あたり、(43手目)▲6四歩を打たれて?
「まだ、まだまだ、漠然として……。先が長い将棋かな?と思ってました」
--簡単には形勢は判断できないと思われていた?
「(61手目)▲5七角(62手目)△同馬の時、(本譜のように)銀を受けるか、(5七にいる後手の)馬を抜くか、かなり微妙なところなんじゃないか?と思ってたんですけど。どちらにしろ、ギリギリの勝負なのかと」
「本当に最後の最後、(93手目)▲5二歩を見つけて……(勝ちと思った)」
--局を振り返って
「ずっと難しい将棋でした」
--これで通算1400勝になった。区切りの良い数字となりました。
「無我夢中でやってたので。意識することなく指してましたので。そういう形になって……。これを励みに前に進んでいけたらいいかな、と思ってます」
--いよいよ大山(康晴十五世)名人の記録(通算1433勝という最多記録)が近づいてきました。
「そうですね。ただ、まだまだ勝ち数としては、だいぶあるので、1個ずつ、目指して、やっていきたいと思います」
【敗れた佐藤名人】
-―横歩取りから激しい将棋になったのは、ある程度、想定していた?
「(21手目)▲2六飛自体は、あるかな?と思ってました。本譜のような展開になって、(32手目)△8三歩と打った時、どういうふうになっていくのか、っていうくらいの感じでやってみた、ということですね」
--封じ手のあたりは、どのように思っていた?
「形勢は難しいような気がするんですけど。ちょっと、何か、やっていかなきゃいけないような感じになってしまってるのかな?というところです」
「(封じ手の38手目)△3八歩とかも、よく分からないまま、進めているところはありますね」
--長考も目立ちました。
「(43手目)▲6四歩と(後手陣は)手をつけられているので、水面下で、かなり大変だったな、と。(42手目△6七角成と)6七の歩を取らなければ、そんなことは無いんですが、その他の指し方がよく分からなかったので……」
「6四歩の形で苦労したかな?という気はします」
--その後、控室では形勢判断が難しい感じでしたが、名人ご自身は?
「(47手目)▲3八玉と寄られて、もう、やっていくしかなくなって……。(63手目)▲4八銀くらいのところも、難解で分からないところが多かったですね」
--どのあたりで劣勢?
「本譜の(77手目)▲8一飛と打たれて、悪いのかな?と思いました。王様が逃げ込めるような展開になると、粘りが利くような気がするんですが、本譜のように指されると、厳しいかな?と思いました」
--(92手目)△6二角と打って。
「他の手もありましたが、それも負けかな?と思いました。ちょっとずつ足りないかな~という感じになりました」
--第2局以降に向けて
「また熱戦を指して、結果を出せるように頑張りたいと思います」(佐藤圭司)