民家が巻き込まれた崩落現場=2018年4月11日午前8時30分ごろ、大分県中津市耶馬渓町金吉、読者提供
田んぼが点在する山あいの静かな集落が、突然の災害で一変した。大分県中津市耶馬渓(やばけい)町で11日未明に起きた土砂崩れ。木々や岩石が転がり、家屋が押しつぶされた現場では救助活動が続き、住民たちは安否不明になった6人の無事を祈った。
大分・中津で土砂崩落、3世帯6人の安否確認できず
大分県中津市の現場では緑の山が高さ約100メートル、幅約200メートルほど崩れ落ち、茶色い山肌がむき出しになっていた。土砂は落石や倒れた木々をのみ込んで住宅4棟に押し寄せ、周辺の生活道路や田んぼにまで広がっていた。
1メートル近い岩も数十個散乱する中、付近の住民や消防、警察官らはスコップで土砂を掘り返し、バケツリレーで運び出した。発生から5時間ほどがたった午前9時ごろには重機が到着し、続いて自衛隊が救助作業に加わった。午前11時ごろにはポツポツと雨が降り出した。
安否が分からない岩下アヤノさん(90)の親族で、北九州市八幡西区に住む男性(62)は現場に駆けつけた。「家がなくなっていた。何も残っていなくて、岩だけがある状態」と途方に暮れた。
岩下義則さん(45)の親族の男性(58)によると、義則さんは足の悪い母親の愛子さん(76)を世話しながら暮らしていた。3月には父親を亡くしたばかりだったという。「仲のいい親子。無事でいてほしい」
現場から約1キロの場所に住む主婦(76)は、岩下愛子さんの一家と親しくしていた。午前6時ごろ、ニュースで土砂崩れを知り、現場近くまで行った。「あんな大きな山崩れは初めて。信じられない」と話し、一家を気遣った。
ペットボトルのお茶を何本も持って駆けつけた女性は「(土砂にのみこまれたのは)弟の嫁の実家。何時間も経つのに、まだ救助されていない」と話した。
現場近くに住む女性は午前4時ごろ、救急車の音で異変に気づいた。現場に行ってみると、土砂が手の付けようがないほど崩れていた。現場そばの住民から「大きい地鳴りがした」と聞かされた。ここ数日雨は降っていない。「なんでこんなことになっているのか」
近くの男性(81)も午前4時過ぎ、警察や消防の車が通る音で目が覚めた。7時過ぎに現場付近を見に行ったが、「目の前の光景が信じられなかった」。現場の集落で生まれ育ったが、「こんな土砂崩れは聞いたことがない」と話した。