路線バスが接触し、先端部分が落ちた石灯籠=2018年4月15日午後0時23分、三重県伊勢市楠部町
三重県伊勢市楠部町の県道で14日、道路脇の石灯籠(どうろう)に路線バスが接触し、石灯籠の上部が落下。歩行者の男性の頭を直撃し、男性が死亡する事故があった。伊勢神宮周辺には民間団体が約60年前に建てた石灯籠が400基以上残る。地震などで倒壊のおそれがあるとして、県が随時、撤去を進めていた矢先だった。
伊勢署によると、現場は外宮と内宮を結ぶ県道で、14日午前10時ごろ、三重交通の路線バスが道路左側にある高さ約2・5メートルの石灯籠に接触した。その衝撃で落下した灯籠の上部(幅約70センチ、高さ約60センチ)が、近くにいた同市神田久志本町の西沢政信さん(81)の頭部に当たった。西沢さんは間もなく死亡した。上部はボルトや鉄柱などでは固定されていなかったという。
三重交通によると、運転手はバス停から約4メートル先の歩道上に、西沢さんら2人の男性の姿を発見。乗客かもしれないと思い、停車しようとして左に寄り、サイドミラーを石灯籠にぶつけたという。
遺族によると、西沢さんは日課の散歩中で、居合わせたのは県外からの観光客だった。遺族はこの観光客から「石灯籠を珍しそうに眺めていたら、道路の反対側から駆け寄って声をかけてくださり、親切に説明をしてくださったところだった」と聞いたという。
伊勢神宮周辺では、昭和30年代、民間団体が寄付を募って石灯籠を建てた。その後、団体が解散してからは所有者や管理者が不明のまま、老朽化が進んだ。
2016年、県は伊勢志摩サミット開催を前に、特に危険だった32基を撤去。その後も年1回安定性を調査し、17年度は28基を撤去した。