VRで打撃練習する山口史朗記者。手前のパソコンと同じ画面が、機器を装着した記者にも見えている
大谷翔平の直球が記録した日本最速の165キロを「打てる」――。そんな「世界初」という施設が4月中旬、大阪・梅田の繁華街に完成した。野球経験のある記者として、ぜひとも体験し、打ってみたい。そんな高校野球担当の記者2人が鼻息を荒くして、飛び込み参戦してみた。果たして、結果は?
阪急梅田駅近くの「ミズノオオサカ茶屋町」。7階建てのビルに、様々なスポーツ用品が並ぶ。中でも目を引いたのは、6階の野球用品売り場の一角。ネットで囲われた4畳ほどのスペースだ。「バーチャルボールパーク」。バーチャルリアリティー(VR、仮想現実)を使った体験ブースだ。
スイング診断、センサーで
VRを使った練習は、すでにプロ野球のDeNAや楽天が取り入れている。では、何が「世界初」なのか。ミズノ研究開発部の植田真弘さんが説明してくれた。「立体映像にあわせてバットを振ると、打てたかどうかまで分かるんです」。共同で開発に携わった、VRとデータサービスの事業を展開する「SOOTH」の松井公平さんが付け加える。「リアルなバットで、軌道や打ったポイントなど、スイングデータを確認できるのは世界でここだけです」
プロが用いているのは、球筋を「見る」だけのVR。ここではスイングの速度や軌道をセンサーで確認できる機器「スイングトレーサー」とVRと連動させることによって、「打つ」という疑似体験をより現実に近づけた。百聞は一見にしかず。まずは打撃に自信のある31歳の筆者が挑戦した。
バットの形状も自在、思わぬ球も……
顔にゴーグルのような機器を装着すると、球場の打席に立っているような空間が広がる。グリップと先端にセンサーを取り付けた木製バットを手渡された。
映像の中で投手が動き出す。まずは時速100キロの直球から。球がスゥーッと近づいてきた。タイミングを合わせて、バットを振ってみる。空振り。実際よりも手元で伸びるように感じた。4球続けて、空振り。見かねた植田さんが「バットを太くしますね」とパソコンを操る。バットがこん棒のような形になった。
スライダーやカーブもきた。そして、頭をめがけて飛んでくる140キロの直球も。「うぉっ」。体が固まった。「デッドボールですね」。植田さんがいたずらっぽく言う。こんなケースまで用意しているとは……。
最後の10球目は165キロ。一昨年、日本ハムの大谷翔平(現エンゼルス)が記録した日本球界最速だ。白球は一瞬で通り過ぎ、完璧に振り遅れた。結局、前に飛んだのはバントした1球だけ。「速ぇ……」とうなるばかりだった。
先輩にかたきをとってもらおう。捕手出身の35歳、山口史朗記者が挑戦。試打を始めると、苦笑いして「これは打てる気せんなあ」。165キロも空振りに終わった。
キャッチャー気分も体感
試打の他にも「捕球体験」ができる。19日のオープニングイベントでは、同社アンバサダーで元プロテニス選手の松岡修造さんは200キロの直球を体感。「面白さもあったけど、強化という意味では世界で誰も投げられないボールを受けられる。ちゃんと受けられるようになったら大リーグも怖くない。テニスでも作ってほしいと思ったくらい」と興奮気味に振り返った。
バーチャルボールパークでは500円(税込み)で、10球の試打と5球の捕球ができる。遠くない将来、VRを使った野球の練習が当たり前になるかも――。そんな期待を抱かせる施設。ぜひ、挑戦してみてはいかがでしょうか。問い合わせは、ミズノオオサカ茶屋町6階野球売り場(06・6147・8490)。(小俣勇貴)