トランプ米大統領(右)と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長=ロイター
トランプ米大統領は10日午前(日本時間同日夜)、自身のツイッターで、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長との首脳会談をシンガポールで6月12日に開催することを明らかにした。外交関係のない米朝の首脳が会談するのは歴史上初めて。金正恩氏は非核化の意思を示しているが、どう実現していくかが最大の焦点となる。
トランプ氏は「大いに期待が高まっている金正恩氏と私の会談はシンガポールで6月12日に開催される。我々は世界平和にとって非常に特別なときになるよう努力する」とつづった。
米政府関係者によると、シンガポールは開催地としての優先順位がもともと高かった。米朝両国とも大使館を置き、政治的な中立性も高い。北朝鮮の外務次官と米政府の元北朝鮮担当者が2015年に非公式接触するなど、協議がたびたび行われてきた実績もある。世界各地から集まるメディアを収容できる施設面の充実も強みだ。
トランプ氏は、朝鮮半島の非武装地帯(DMZ)にある板門店での開催にも意欲を示していた。「歴史的会談」としての演出を重視したとみられる。しかし、米政府内の検討で、北朝鮮に「歩み寄った」との印象を国際社会に与えかねないとの懸念から断念した。
スイスのジュネーブも有力候補に挙がっていたが、金正恩氏の移動手段である専用機の航続距離が短いことから見送られることになった。
米朝首脳会談の最大の焦点は北朝鮮の非核化だ。米側は北朝鮮に「完全」かつ「検証可能」で「不可逆的」な非核化を求めている。「過去の過ちは繰り返さない」(米高官)ため、北朝鮮が非核化に向けた具体的な行動を取るまでは、最大限の圧力を続ける考えだ。
一方、北朝鮮は段階的に非核化しながら、経済制裁の緩和や体制保証を約束させる戦略とみられる。北朝鮮が拘束していた米国人3人を9日に解放したことで、米朝両国に前向きな雰囲気は出ている。4月の南北首脳会談で合意した朝鮮半島の「完全な非核化」の目標のもと、米朝が具体的な非核化の行程を描き出せるかが大きな焦点となる。(ワシントン=園田耕司)