マレーシアのマハティール政権が、中国の主導する大型インフラ事業の見直しを進めている。対象は中国の習近平(シーチンピン)国家主席が掲げる「シルクロード経済圏構想(一帯一路)」の案件や中国の受注が有力とみられていた高速鉄道計画などだ。ナジブ前政権で強まった中国依存を修正する狙いがあるとみられる。
「大型インフラ事業を継続するかどうか、もうすぐ決める」。23日、初閣議を終えたマハティール首相は記者会見でこう語り、前政権が決定した大型案件はすべて見直すと表明した。
前政権下で1兆リンギ(約27兆6千億円)にまでふくれあがった国の債務を減らすためとされるが、マハティール氏には中国への過度な依存を弱める狙いもある。
アズミン・アリ経済相が見直しの対象として挙げているのが、マレー半島部のタイ国境から南シナ海に沿って東海岸を走り、マラッカ海峡に通じる「東海岸鉄道」だ。中国が1兆4千億円規模の総工費の大半を融資し、「一帯一路」に位置づけられている。
また、クアラルンプール―シンガポール間の約350キロを約1時間半で結ぶ高速鉄道計画も見直す考えだ。23日の会見では、事業を所管していた陸上公共交通委員会(SPAD)を解体するとも発表した。
高速鉄道の入札手続きは昨年12月に始まり、来年9月までに事業者を選定する予定だった。日本や中国が激しく受注を争っていたが、前政権下では中国が有力との見方が強かった。
ナジブ前首相は自身の資金流用も疑われる政府系ファンド「1MDB」の約420億リンギ(約1兆1600億円)の巨額負債が表面化した際、ファンドの資産を中国国有企業に売却して経営破綻(はたん)を免れた経緯があり、中国との関係が深かった。マハティール氏は「ナジブ氏は中国に国を売っている」と批判してきた。(クアラルンプール=守真弓)