下関国際戦で力投する広島新庄の先発桑田=4日、山口マツダ西京
高校野球の春季中国地区大会は4日、山口市の山口マツダ西京きずなスタジアムで決勝があり、広島新庄(広島1位)が下関国際(山口2位)を8―2で下した。広島新庄は準優勝した昨年に続く2回目の出場で、初優勝を果たした。
広島新庄が記録した安打は15本。迫田守昭監督は、その数字に関心を示さなかった。「(中国大会は)どの試合も2点以内に抑えたことが、この春の一番の成長」。たたえたのは、投手陣だった。
決勝の先発は177センチの桑田孝志郎(2年)だった。変化球は見せ球程度で、伸びのある140キロ前後の直球で攻める。今春の選抜に出場した下関国際を五回まで無失点に抑えた。
2点リードの六回、無死一、二塁のピンチを招く。「(準決勝からの)連投の疲れが見えた」と迫田監督。「四球を出さないから、崩れない」と信頼するエースの竹辺聖悟(3年)をマウンドへ送った。
竹辺は1死後、二塁打を浴びて同点にされた。だが、162センチの体をめいっぱい使って140キロ台の直球を投げ込み、後続を断つ。四球は一つも与えず、七回以降は「0」を並べた。「2人とも良さを出してくれた」と迫田監督はねぎらった。
中国山地の真ん中、北広島町にある広島新庄では、好投手が育つ。2013年には広島大会決勝で瀬戸内の山岡泰輔(オリックス)と延長十五回と再試合を投げ合った田口麗斗(巨人)、16年には高校日本代表に選ばれた堀瑞輝(日本ハム)が輩出。ほかの世代でも、「県内屈指」と呼ばれるエースがいた。
そんな投手たちに引き継がれてきたものがある。「自主性」だ。監督とともに指導にあたる宇多村聡コーチは言う。「ピッチャーのメニューは特に決まっていません。走るもよし、投げるもよし、ウェートもよし」。桑田が「たまに何をしていいかわからないときもある」と言うほど、選手任せなのだ。
迫田監督が補足する。「投手はいじらない方がいい。教え過ぎちゃうと良さが消えて、平凡になっちゃうことがあるから。僕が教えるのは、態度や心構えだけ。田口は要領がいいし、ガキ大将みたいなやつだったんで、目を光らせましたがね」。そんな環境が、伸び伸びと自分の武器を操る投手を育ててきた。
「打たなきゃ勝てない」と言われて久しい高校球界。迫田監督はぶれない。「野球は9割が投手ですから。打つのは知れてる。145キロくらいを投げる大阪桐蔭の投手から、とれても2、3点。守備力で勝つしかない」。100回目の夏も、変わらぬスタイルで戦う。(小俣勇貴)