インフォ
■なるほどハッケン 九州・山口
天井からにょきにょき生える鍾乳石に、見上げるような巨大な石灰柱――。年間約50万人が訪れる山口県美祢市の秋芳洞(あきよしどう)。その鍾乳洞の長さが、ぐんぐん伸びている。7月にはそれまでより約1・5キロ長い10・30キロとなり、国内3位に。今冬にもさらに伸びる見込みだ。だが、洞窟自体が大きくなっているわけではないらしい。どういうことなのか。現地を訪ねた。
「秋芳洞は分からないことだらけ」。秋吉台科学博物館の特別専門員、村上崇史さん(40)は話す。洞内には前人未踏の場所がたくさんあり、今も探検が続いているという。
秋芳洞の探検は、明治37(1904)年に始まった。実業家の梅原文次郎が観光資源として注目し、英国王立地学協会会員で山口高等商業学校(現山口大)の教員だったエドワード・ガントレットらが洞内の調査に入った。
探検には地図がつきもの。地図の作製には測量が不可欠だ。ガントレットは洞内の様子を記録し、簡単な測量をした。この測量に長さが伸びる秘密がある。
当時は「平板測量」という方法が使われていた。平らな板を三脚の上に水平に置き、コンパス、巻き尺などを使って測量地点の縮小図を描く。ただ、完成するのは平面図で、高低差がありくねくね曲がる洞内の測量には不向きだった。
そこで編み出されたのがコンパス、水準器にレーザー距離計を使う方法。測量する区間の両端の目印をつなぐ線の距離、高さ、方位、傾斜角を測る。その線から左右の壁までの幅、天井までの高さも測り、三次元の図を作っていく。洞内の形に沿ったより正確な測量で、長さも従来より伸びていった。村上さんは「国内の洞窟は測量合戦」。研究者や探検家が競うように測量しているという。
村上さんのチームは、昨年7月に始まった測量で新空間を発見した。洞内を再測量した部分も含めた新しい長さは10・30キロ。新空間の測量は今も続き、大山水鏡洞(鹿児島県沖永良部島)を抜いて国内2位になることが確実という。新たな長さは、今年11月の日本洞窟学会で発表する。
発見した時は「誰も入ったこと…