エアビーアンドビージャパンの田辺泰之社長
住宅宿泊事業法(民泊新法)が15日に施行され、民泊が解禁されます。仲介サイト最大手の米エアビーアンドビーは、届け出がない違法なヤミ民泊は、それまでに全て掲載をやめるとしています。日本法人の田辺泰之社長(46)に今後の展開について聞きました。
――観光庁は昨年12月に民泊仲介サイトに対して、ヤミ民泊の掲載をやめるよう要請しました。
「観光庁とは常に話をしている。都道府県などへの届け出がないままの民泊は非表示にする方針だ」
――数万件の民泊のかなりの部分がヤミ民泊だと指摘されています。非表示にすると、サイトの掲載数が減るのではないですか。
「予測は難しいが、まだまだ伸びしろがある。今は東京や大阪、京都に集中しているが、地方で増やせる。簡易宿泊所の許可を取った物件もある。旅館やホテルなど既存の施設の掲載も増やしていく方針だ。パリやロンドンなどと比べても伸びる余地があると考えている」
「日本人の利用者も増えていて、この1年で約2倍に伸びた。旅行だけでなく、出張時の利用も広がってきている。例えば、部署の違う人たちが一軒家を貸し切りにすれば、合宿のような効果も期待できる」
――リクルートや楽天が仲介事業に乗り出すなど、競争は激化していきます。
「地元の人が現地を案内する様々な体験の仲介を、2016年秋に東京から始め、関西や福岡にも広げた。すでに1千件ほどの体験が掲載されており、今後も段階的に提供エリアを拡大していく。同じ土地でも案内する人が違えば提供することができ、リピーターを作ることもできる」
――宿泊以外にも事業を広げるということですか。
「我々のサポートの中で宿泊場所の提供はほんの一部に過ぎない。米国ではレストランの予約なども始まっており、移動や食事の部分でも何かできるかもしれない。全日本空輸や格安航空会社のピーチと昨年11月に提携し、宿泊予約時にマイルを付与するなどの協業を行っているが、ほかにも様々な協業を視野に入れている」
――民泊への住民の懸念は強く、各地で営業を週末に限るなどの厳しい条例の制定が相次いでいます。
「地域ごとに事情があり、自治体の方が検討していることだと思う。決して厳しすぎるとは思わない。日本らしく新しい旅のスタイルが根付いていくことが重要なので、できるだけ協力していく」(聞き手・森田岳穂)
◇
たなべ・やすゆき 1971年生まれ。大阪府出身。94年に米国の大学を卒業後、コカ・コーラなどに所属してマーケティング関係の仕事を経験。2013年にエアビーアンドビーのシンガポール法人に入社し、日本法人の設立に参加。14年の設立時に社長就任。