母国を強くしたいと語るカナダ代表のパトリック・アンダーソン
車いすバスケットボール界にレジェンドと称される選手がいる。カナダ代表のパトリック・アンダーソン(38)。2012年ロンドン・パラリンピック後、代表を離れたが、20年東京大会に向けて復帰した。「力の落ちたチームカナダを、再び世界の強豪に戻すことが僕のゴールだ」と話す。
「若手育てたい」代表チームの一員で来日
アンダーソンは、8~10日に東京・調布市の武蔵野の森総合スポーツプラザで開かれている国際強化試合「三菱電機ワールドチャレンジカップ2018」に出場するため、チームとともに来日した。日本、豪州、ドイツとの4カ国の総当たりで頂点を争う。
アンダーソンを欠いたカナダは、2016年リオデジャネイロ大会で出場12カ国中、11位に沈んだ。再建を担うベテランは「今はカナダがどの位置にいるかを知ることが大事」と国際親善試合の意義を唱え、「若手と競い合いながら、育てていきたい」。
カナダの黄金期支える
9歳の頃に飲酒運転の車にはねられ、両足のひざから下を失った。その後、ジュニアのスポーツキャンプでバスケと出会った。「足をなくして大好きなスポーツができないと思っていた時に、バスケと出会った。手に掛けられていた手錠が外されたような、素晴らしい瞬間だった」
アンダーソンは1997年に代表入り。そのずば抜けた才能で、すぐにカナダは黄金期を迎えた。
00年シドニー、04年アテネで金メダル。続く北京は銀に終わったが、12年ロンドンでは再び頂点に。その後、競技以外のことも充実させたいと代表を離れ、家族や音楽活動に時間を費やした。
5回目のパラリンピックへ再び「トップ目指す」
昨年、改めて競技の世界に舞い戻ったのは、「若き日の自分と同じように才能ある選手に魅力を感じたからだ」という。車いすの片方の車輪を持ち上げて、手を伸ばしてのパスカットやゴール下でのノールックパスなど、華麗なプレーで「車いすバスケ界のマイケル・ジョーダン」の異名をとる男の血がまた騒ぎはじめた。
20年大会まで2年。41歳で迎える5回目のパラリンピックに向けて、「若手を育ててトップを目指したい。さらにパラスポーツを普及の面で次のステージに進めたい」と話した。
◇
WOWOWが国際パラリンピック委員会と共同で制作する「パラリンピック・ドキュメンタリーシリーズ『WHO I AM』」にアンダーソン選手が登場する。秋の放送予定。(榊原一生)