相馬市役所に到着した天皇、皇后両陛下=2018年6月11日午後0時1分、福島県相馬市中村、迫和義撮影
天皇、皇后両陛下は11日、2泊3日の福島県訪問を終えた。毎年恒例の全国植樹祭への出席が主目的だったが、3日すべてに東日本大震災の慰霊や復興状況の視察が組み込まれた。在位中おそらく最後となるお二人の被災地訪問を、多くの県民が歓迎した。
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郡山市からいわき市、そして南相馬市へ。3日間の車の移動は約280キロに及んだ。宮内庁によると、皇后さまは長距離移動の疲労のため10日夜に発熱し、11日朝には38・1度の熱があったが、周囲に迷惑をかけたくないと、予定をすべてこなした。
皇后さまの熱は徐々に下がったが、11日は終日雨が降り、肌寒さが続いた。両陛下は相馬市原釜地区の慰霊碑に白菊を供えて犠牲者を悼んだ後、相馬原釜地方卸売市場でアイナメの仕分け作業などを見学した。地元の漁業は福島第一原発の事故の影響で中断、現在は安全を確認しながら試験的に操業している。かねて風評被害を気にかけてきた両陛下はこの日、相馬産のカレイやホッキガイを買い求めたという。
10日はいわき市から全国植樹祭に向かう常磐自動車道で、帰還困難区域を通過した。その途中に立ち寄った広野料金所では、雨の中、待ち受けた楢葉町や広野町の人たちと懇談。楢葉町の中学3年生青田康佑君(14)は「本当にこれまで色々ありました」と伝え、皇后さまは「楢葉町を明るくしていってください」と励ました。
広野料金所から南相馬市に向かう高速道路上では、両陛下は原発に最も近づく5・8キロの地点を通過。宮内庁によると、車の速度を緩めたが、あいにくの雨で原発は見えなかったものの、両陛下はじっとその方向を見つめた。車が高速道を降りた後は、道路わきに大量の除染土が積まれた様子も車内から視認したという。(島康彦、緒方雄大)