主な被災自治体と「避難講堂要支援者名簿」を使った安否確認状況
災害時に自力で逃げることが困難な「災害弱者」の安否をどう把握するのか。大阪府北部を震源とする最大震度6弱の地震では、国が作成を義務づけている要援護者の名簿が活用されないなど、被災自治体の対応にばらつきが見られた。名簿を活用するかの判断は自治体任せで、基準もあいまい。今後の災害支援のあり方をめぐる課題といえそうだ。
【特集】大阪北部地震
要支援者名簿、活用は被災8市町どまり 大阪北部地震
地震で3人が亡くなった高槻市。20日夕、防災服を着た高槻市の職員3人が、約30人が避難する富田老人福祉センターに入った。高齢者に「体調はどうですか?」と話しかけ、血圧を測った。
同市では、独居の高齢者らの安否確認のため職員が避難所を巡回。障害福祉事業所にも利用者の安否確認を求めてきた。ただ避難所にいる人はごく一部。障害福祉サービスを利用しない人もいる。安否を正確に把握できていないという。
一方、市では災害対策基本法に基づいて障害や高齢で災害時の支援が必要とされる「避難行動要支援者」(2万2392人分)の名簿を作成している。だが地震発生から3日間、この名簿を使ってこなかった。
担当者は「効果的な手法を検討していた」と説明。発災4日目の21日から、名簿を使って個別確認を始めた。ただ市職員が名簿の連絡先に電話などで確認するため、いつ作業が終わるかは見通せない状況だ。
きっかけは東日本大震災
国が避難行動要支援者の名簿作成を義務づけたのは、2011年の東日本大震災がきっかけだ。震災では犠牲者の約6割が65歳以上で、障害者の死亡率も被災者全体の約2倍だった。
国は13年の法改正で名簿作成を義務づけ、指針で無事が確認されていない要支援者は名簿を活用して安否確認するよう求めた。総務省消防庁の昨年の調査では、大阪府内の全自治体が昨年度末までに名簿を作成している。
ただ、実行するかは自治体任せなのが実情だ。どの程度の災害で安否確認をするかの基準もあいまいで、自治体の考え次第だ。今回、発災3日目の20日までに、災害救助法が適用された被災13市町のうち5市が、名簿を全く活用しなかった。さらに、3市は安否確認を実施していない。
背景には、自治体側の混乱や地…