梅毒の進行と注意点
性行為などで感染する梅毒の増加が続いている。昨年は44年ぶりに報告数が5千件を超し、今年も昨年を上回るペースという。地方都市や若い女性にも広がる。感染に気づきにくいため人にうつしやすい。自分とは無関係と思わずに予防を心がけ、心当たりがあれば検査を受けることが大切だ。
抗菌薬、12週間の服用が必要
梅毒は、感染から数週間後に性器や口の感染部位にしこりや潰瘍(かいよう)ができる。ただ、治療しなくても症状が軽くなるため見過ごされやすい。数カ月後には全身の皮膚や粘膜に赤い発疹が出現。このときも治療せずに消えることがあるため、知らずに他人にうつしたり、治療が遅れて、記憶障害やまひなどの神経障害につながったりする恐れがある。
予防には、不特定多数の人との性行為を避けることが重要だ。性行為の際は最初からコンドームをつけると、感染リスクを減らせる。日本性感染症学会副理事長の石地尚興(いしじたかおき)・東京慈恵会医大教授(皮膚科)は「リスクのある性行為は避け、感染が心配なときは検査してほしい」と訴える。感染の有無は血液検査でわかり、地域によっては保健所で無料で受けられる。
治療には抗菌薬が有効だ。ただし最長で12週間飲み続ける必要があり、「途中で断念してしまう患者もいる」と日本家族計画協会の北村さんは指摘する。厚生労働省によると、海外では1度の注射で済む薬が使え、世界的に標準治療となっているという。現在、厚労省はメーカーに開発を要請している。
患者の大半は成人男性だったが、今回の流行では20~30代の女性にも広がる。妊娠した女性が感染すると流産や死産したり、赤ちゃんの肝臓や目、耳に障害が起こったりする「先天梅毒」になる恐れがある。厚労省によると、先天梅毒の赤ちゃんは13年に4人だったが16年は14人。厚労省研究班の報告書によると、11~15年の間に赤ちゃん20人がなり、うち3人が死亡、3人に後遺症があったという。
厚労省は4月、梅毒に感染した妊婦の早期治療につなげようと、診断した際に医師に義務づけている届け出の項目に「妊娠の有無」を加える方針を決めた。また風俗業の従事歴なども項目に加え、感染経路を分析する方針だ。(水戸部六美、黒田壮吉、阿部彰芳)
感染者が急増している梅毒。適…