「枕木」の3本に1本を木製からコンクリート製に取り換えた「わたらせ渓谷鉄道」の線路。一部を交換するだけでも脱線防止に有効という(運輸安全委員会提供)
全国の地域鉄道で8カ月に4件も脱線が相次ぎ、国の運輸安全委員会は28日、レールを支える「枕木」を木製からコンクリート製に換えるよう促す提言書を石井啓一国土交通相に提出した。国交省は全国の鉄道事業者に対応を求める方針だ。
提言書などによると、和歌山県御坊市の紀州鉄道で2017年1月、1両編成の車両が左カーブを走行中に脱線した。調査の結果、木製の枕木が腐食したり割れていたりしていた。その結果くぎでレールを固定する力が低下し、外側にレールが傾いて2本の間隔が広がり、間に車輪が落ち込むように脱線したという。
1カ月後には熊本市の熊本電気鉄道で右カーブを走行中の2両編成が脱線。木製の枕木にレールを固定するくぎが緩み、レールが傾いて間隔が広がったことが原因だった。
17年5月には群馬県桐生市のわたらせ渓谷鉄道でも同様の事故が起きた。16年10月に岐阜県大垣市の西濃鉄道で同様の脱線が起きてから、約8カ月で4件も脱線が続いたことになる。
運輸安全委は対策として、線路の枕木を木製から、より耐久性が高く固定する力が強いコンクリート製へ交換していくことを提言。コスト的に難しい場合は、数本に1本の割合で交換するだけでも事故防止に有効だという。他の対策としては、脱線防止ガードの設置などを挙げた。
運輸安全委によると、都市部の鉄道では枕木のコンクリート化が進んでいるが、経営環境が厳しい地方の中小民間鉄道では、今も木製の枕木が高い割合で使われている。同委は、国や自治体の補助金や鉄道・運輸機構による技術支援制度などを活用できるよう、地方への情報提供を進めることも石井国交相に求めた。(伊藤嘉孝)
木製の枕木が関係した脱線事故
2016年10月 岐阜県大垣市 西濃鉄道で25両編成の貨物列車が脱線。けが人なし
17年1月 和歌山県御坊市 紀州鉄道で1両編成が脱線。乗客5人、けがなし
2月 熊本市 熊本電気鉄道で2両編成が脱線。乗客約50人、けがなし
5月 群馬県桐生市 わたらせ渓谷鉄道で作業車両が脱線。けが人なし