舞台を囲むように配置された客席。開放的な眺めと響きを同時に体感できる=大阪市北区
時紀行
クラシック音楽を堪能できる専用ホール。記者も幼い頃から、そこでオーケストラやソリストの演奏を楽しんできた。今や日本各地に存在するが、一番初めに建てられたのは、1982年に大阪に誕生したザ・シンフォニーホールだ。それまで日本で聴くことのできなかった最高の響き「残響2秒」を追求したホールのこだわりを取材した。
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(時紀行:時の余話)ライバルホールの特徴は
客席の照明が落ち、指揮者がタクトを振り始める。バイオリンやチェロが音を刻み、ホルンやクラリネットの旋律が重なる。日本センチュリー交響楽団の演奏会。響きがホールを包み込み、まるで楽器の中にいるようだ。
ここは大阪にあるザ・シンフォニーホール。「クラシック音楽を聴くには、残響2秒が最適とされているんですよ」。設計を担当した元大成建設の美濃吉昭さん(82)は話す。
残響とは、演奏が止まった後にも響いている音で、演奏の余韻を作る。フェスティバルホールやサントリーホールを設計した永田音響設計(東京)などによると、ウィーン楽友協会ホールなど「響きがいい」と評される世界の名だたるクラシック専用ホールの残響は、どこも2秒程度だという。
天井の反響板、吸音材を使った椅子のカバー、床には音を反響させるコルクのタイル……。日本初のクラシック専用ホールとして1982年に建てたとき、1704席で最高の余韻を味わえるよう、細心の注意が払われたという。
84年にこの舞台に立った世界的指揮者カラヤンは「最も音響的にすぐれたホール」と称賛した。建設時の絶対目標「残響2秒」はホールの代名詞となり、当時の評判に違(たが)わぬ響きを届け続けている。
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