東京地裁の判決を待つスリランカ人の男性=鬼室黎撮影
難民認定を求めて国と裁判で争い、いったんは勝訴が確定したスリランカ人男性(58)が再び不認定となり、2回目となる訴訟を起こしている。全国難民弁護団連絡会議(全難連)によると、過去にも勝訴後に難民不認定となった例はあるが、再び訴訟を起こしたのは初めてという。判決は7月5日、東京地裁で言い渡される。
スリランカでは1983年から2009年まで、多数派のシンハラ人を中心とした政府軍と、少数派タミル人による反政府武装勢力「タミル・イーラム解放の虎(LTTE)」の間で内戦が続いた。
難民認定を求めている男性はタミル人。勝訴が確定した判決などによると、最大都市のコロンボで工場を経営していたが、内戦が激化した00年代半ばには製品に爆弾が仕掛けられ、義兄や知人らが殺されるといった事件が相次いだ。政府側からLTTEへの協力を疑われてたびたび拘束された男性はLTTEからも疑われ、06年秋に出国。カナダで難民認定された兄の元へ向かおうとした。
経由地の中部空港(愛知県)で偽造旅券の所持を理由にカナダ便への搭乗を拒まれた男性は、日本の入管施設に収容された。難民認定の申請が認められず、強制退去も命じられたため、07年に国を相手取って提訴。大阪地裁は11年に「生命・身体に対する恐怖を抱く客観的事情があった」として難民にあたると認定し、「母国への送還は、入管法の根幹にかかる重大な過誤」と強制退去処分も無効だとした。国が控訴せず、判決は確定した。
ところが、国は同年末に再び男性を難民として認定しないと決定した。理由は「戦闘終結が宣言され、男性が迫害を受ける具体的、客観的危険性があるとは認められない」ことだった。
「定住者」の在留資格を得て千葉県内で暮らす男性は弁護団の協力を得て、15年に2回目の処分の取り消しを求めて提訴。訴訟で弁護団は内戦終結後も誘拐や拷問事件が続いている点を挙げ、「今でも迫害の恐れがあり、難民に該当する」と主張。「難民にあたるという判決が確定したにもかかわらず、再び不認定とした国の姿勢は、甚だしい司法軽視だ」と訴えている。
法務省難民認定室は「個別案件には答えられない」としたうえで、「一般的には、判決を前提に改めて難民該当性を判断する。判決から時間が経って本人や出身国の事情が変化すれば、その点も考慮する」と説明する。
全難連によると、裁判で勝訴した後に再び難民不認定となった例は過去に、アフガニスタン人やネパール人ら計4人いるが、2回目の訴訟を起こしたのは男性が初めてという。
■尊厳と家族、取り戻…