富士フイルムホールディングスは18日、同社による買収合意を破棄した米事務機器大手ゼロックスを相手取り、10億ドル(約1100億円)超の損害賠償などを求める訴訟を米ニューヨーク州の連邦地裁に起こした。正当な理由のない合意破棄は契約違反だと主張している。
富士フイルムは訴状で、米ゼロックスが外部投資家らの不当な圧力に屈して買収合意を破棄したなどと指摘し、「言語道断の振る舞いだ」と非難した。買収の実現によって富士フイルムの株主が得られたはずの利益に懲罰的な賠償を上乗せし、計10億ドル超の支払いを求めた。買収をやめる場合は、違約金1億8300万ドル(約200億円)を米ゼロックスから受け取る権利があるとも主張している。
富士フイルムは提訴後に出した声明で、「(今回の買収計画が)両社の株主にとって短期的にも長期的にも多大な利益をもたらす唯一の正しい道」だとし、引き続き買収実現をめざす姿勢を強調した。同社の古森重隆会長兼最高経営責任者(CEO)は今月7日の報道各社のインタビューで「契約したことだから履行を迫る。まずは法廷闘争だ」と述べ、米ゼロックスに対する訴訟を起こす準備を急ぐ考えを示していた。
米ゼロックスも声明を出し、富士フイルム子会社の富士ゼロックスで起きた不正会計問題が未解決なことが合意破棄の主な理由だと主張。「契約上の明白な権利を正しく行使したという絶対の自信がある」と反論し、全面的に争う構えをみせた。
富士フイルムと米ゼロックスが1月に買収合意を発表した後、著名投資家カール・アイカーン氏ら米ゼロックスの大株主2人が買収に反対を表明。米ゼロックスの当時の経営陣は、富士フイルムと大株主の間で迷走を重ねた末、5月に買収合意を一方的に破棄した。大株主は米ゼロックスに新たな経営陣を送り込んでいる。(ニューヨーク=江渕崇)