米ニューヨーク州で約20年前に結婚し、夫婦別姓のまま同州で暮らしている映画作家の想田和弘さん(48)と妻の柏木規与子さんが18日、戸籍で婚姻関係を証明できずに不利益を被っているとして、夫婦としての地位確認などを求める訴訟を東京地裁に起こした。訴訟では、夫婦別姓を認める立法を国が怠っている状態は憲法違反だと主張している。
夫婦別姓、訴訟で問う個人の自由「吸収合併したくない」
夫婦別姓をめぐっては、東京と広島の事実婚カップルのグループや、ソフトウェア会社の男性社長も裁判を起こしている。想田さん夫妻の代理人を務める竹下博将弁護士は「別姓のまま、婚姻関係の確認を求める訴訟は前例がない」と話し、「勝訴すれば、判決書が夫婦の証明書になる」としている。
海外で結婚した場合、日本の戸籍上でも夫婦になるには民法が定める夫婦同姓の規定に従い、結婚後の名字を決め、届け出をしなければならない。想田さんと柏木さんは今月、都内の区役所に別姓のままの婚姻届を届け出たものの、受理されなかったという。
提訴後に都内で記者会見した想田さんは「僕らは独立した人格のまま、仲良くやっていこうという結婚観。同姓の方がしっくりくる人はそれでいいと思うので、僕らの欲求も認めてほしい」と訴えた。
竹下弁護士は「2人は結婚していることを証明する戸籍がない。裁判所の判決書が、相続や税の問題の時に戸籍謄本の代わりになる」と訴訟の意義を説明。「制度を整備する必要性があることを、裁判を通じて訴えていきたい」と述べた。(北沢拓也)