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パナマ文書、新たに120万件 メッシ選手らに再び疑惑

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バルセロナに所属しているメッシ選手=2017年7月、東京都世田谷区、長島一浩撮影


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各国首脳らとタックスヘイブン(租税回避地)の関わりを明るみに出した「パナマ文書」の流出元となったパナマの法律事務所「モサック・フォンセカ(MF)」から、新たに120万件の電子ファイルが流出した。2年前に一連の報道が始まった後、各国の捜査当局への対応を迫られたり、顧客からの多くの苦情への対応に追われたりした混乱ぶりが示されている。


知らぬ間に出会い系「運営」 パスポートのコピー使われ


第一報から2年、パナマ文書再び これまでの経緯を解説


特集:パナマ文書


前回と同様、南ドイツ新聞が入手し、国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)を経由して、朝日新聞など各国の報道機関が共有した。多くは2016~17年の2年間に作成されたもので、全部で443ギガバイトある。


新たなファイルからは、MFが、管理する法人の本当の所有者がだれなのかを把握できていなかった実態が浮き彫りになった。報道が始まって間もない頃のMF内のまとめによれば、英領バージン諸島で70%、パナマで75%の法人の所有者が不明だったという。


一連の報道で指摘されたアルゼンチンのマクリ大統領やサッカーのメッシ選手の関係会社について、MF内でその実情や対策を議論した記録もあった。カザフスタン大統領の娘で同国の元副首相でもあるダリガ・ナザルバエフ氏が、バージン諸島の会社の株主だったことも新たにわかった。


一連の報道で、アイスランドとパキスタンの首相が辞任に追い込まれるなど、各国に衝撃が走った。MFは今年3月に事務所を閉鎖した。ICIJと南ドイツ新聞は昨年11月にも、租税回避地を専門とする別の法律事務所などから流出した「パラダイス文書」の報道を手がけた。(奥山俊宏)


パナマ文書


英領バージン諸島やバハマ、セーシェル島など租税回避地での法人設立や維持を主業務にしていたパナマの法律事務所「モサック・フォンセカ(MF)」社内で作成されたメールやPDFファイルなどの電子ファイル。流出したものを国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が「パナマ文書」と名付けた。



信頼回復を狙い隠蔽工作


今回流出した文書によると、MFは16年9~10月に虚偽文書の作成を企てた。同年4月の「パナマ文書」報道で、アルゼンチンのマクリ大統領とその父らが、カリブ海のバハマの会社役員になっていたことが報じられたためだ。MFはそれを報道まで把握せず、顧客確認を怠っていたことが露呈しそうになっていた。


MFはマクリ氏の会計士に対し、「16年4月より数年前に経営陣を確認していた」という手書きの文書を作成できないかと打診。だが会計士から「リスクが高すぎる。筆跡の専門家が見たらすぐにばれる」と断られ、企ては頓挫した。


「パナマ文書」報道は、租税回避地(タックスヘイブン)を利用して秘密保持が売りだったMFの信頼性を失わせた。「匿名性」を利用して蓄財を図ってきた顧客からは「信頼も信用もできない。さようなら」「あなた方の能力を信じていたことが間違っていた」などの批判が寄せられた。


顧客離れに直面したMFは、影響を抑えようと画策した。手数料の減額を提案したり、会社名が流出した恐れのあるペーパーカンパニーに名称変更を提案したりした。また報道を抑え込むため、「盗まれた情報を使うことは犯罪だ」と強調。パナマの検事総長に対し、同国入りして取材している報道陣を「すぐにでも尋問するよう」に求め、文書の入手方法を明かさない限り、宿泊先から外出させてはならないとも主張した。


だがパナマの検事総長は17年2月、ブラジルの国営石油会社を巡る大規模汚職にMFが関与していると指摘。MFを「犯罪組織だ」と非難し、五つの犯罪容疑で捜査を進めていることを明らかにした。またMFは、西インド洋の島国セーシェルの資金洗浄を禁じる法律などに違反していたことも判明した。


MFは16年5月、ジャージー島など3拠点を閉鎖。18年3月には事業を停止した。


メッシ選手にマレーシア前首相…


新たな疑惑が浮上した著名人や各国首脳もいる。


サッカー・アルゼンチン代表のメッシ選手とその父は前回報道の際、パナマの会社を使って肖像権を巡る租税を回避していた疑いが浮上。メッシ氏側はこの時、ICIJの取材に「パナマの会社は全く関係していない」と否定していた。


だが今回流出したMF内部のメールには、従業員が「ウルグアイ事務所は『メッシ氏親子は(パナマの)会社を利用している』と私に話した」と書いた文面があった。またMFが17年2月、メッシ氏親子の会社の疑わしい取引について報告書をまとめ、パナマ当局に提出していたことも判明した。これに対し、メッシ氏の弁護士はスペイン紙エルコンフィデンシャルの取材に「終わった話だ。(パナマの)会社は使われていない」と改めて答えた。


政府系ファンドを巡って捜査対象となっているマレーシアのナジブ前首相も、前回名前が挙がっていた1人だ。今回の文書流出で、MFが英領バージン諸島に登記した会社がナジブ氏の兄弟によって管理されていたことがわかった。同社は米国内に土地を所有する。


またカザフスタンのナザルバエフ大統領の娘で、「後継者」と目される元副首相のダリガ氏は07年10月、英領バージン諸島の会社の一人株主になっていた。同社は複数の会社を経由した上でカザフスタンの精糖工場に出資していた。


仏高級ブランド「カルティエ」の創業者一族であるピエール・カルティエ氏(故人)の相続人にも租税回避の疑惑が浮上した。MFは前回報道の後、カナダの森林とスイス銀行の口座を持つパナマのペーパーカンパニーが相続人らによって管理されていることを17年7月に把握した。一族は仏紙ルモンドの取材に対し、回答を拒否したという。(軽部理人、藤原学思)



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