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NY育ちジョーイが憧れた甲子園 最初で最後の背番号1

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交流戦で本塁に生還したチームメートをたたえるディロルフジョセフ亜希羅(右から3人目)ら上田西の選手ら=2018年6月29日、長野県営上田野球場


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「ジョーイ、頼むぞ!」


ベンチから声が飛ぶ。


長野大会開幕1週間前の6月29日。上田西のディロルフジョセフ亜希羅(3年)は、甲子園をかけて争うライバル・佐久長聖との交流戦のマウンドに立っていた。両校のブラスバンドやチアリーダーが勢揃いで見守る中、長い手足を使って打者から三振を奪うと、拳を握った。


強豪校の両校が、大会前に交流戦を開くのは今年で7回目。長野大会のベンチ入りメンバー20人から漏れた両校の選手が、この日限りの背番号をつけて戦う。両校で70人余が出場し、ジョーイもその1人だ。


米国人の父と日本人の母の間に生まれ、2歳からニューヨークで暮らした。家から近いヤンキースタジアムには何回も通った。イチロー、松井秀喜、田中将大――。目の当たりにした日本人選手たちのプレーに憧れた。


そして、日本では毎年、予選を勝ち抜いた全国の高校のチームが「甲子園」という場所で戦い、日本一を決める大会があること、多くの日本人大リーガーも、かつてはそこでプレーし、ファンの間で語り草となっていることを知った。


「日本の高校で野球をしたい。甲子園に行きたい」


甲子園のような高校野球の大会は、米国では聞いたことがなかった。2年前の春、母と共に長野県に転居し、前年の夏に甲子園に出た上田西に入学した。


しかし入学後、走り込みを重ねる中で、右足に抱えた痛みが耐えきれない程になっていた。以前疲労骨折した箇所の付近で、軟骨のかけらが遊離し、患部で炎症を起こしていた。


翌年の春に軟骨片を取り除く手術を受けた後も、右足に体重をかけると、太い針を刺されたような激痛が走った。右投げのジョーイにとって、軸足となる右足の故障は深刻だった。制球が安定せず、練習試合ではたくさん四球を出した。


苦しい時は、いまは離れて暮らす父の言葉を思い出した。ボードゲームをして遊ぶたびに、「最後まで結果はわからないぞ」と英語で口癖のように話していた。「あきらめなければ良いことがあるんだ」と信じ続けた。


3年生になると、治療の効果が出はじめ、試合では制球が安定し、変化球で空振りを取れるようになった。入学してから一度も入ることができなかった公式戦のベンチに入ることが、最後の夏の目標だったが、かなわなかった。


それでも、「けがをしてから、良いこともあった」とジョーイは言う。走ることが当たり前じゃないこと、試合に出られない人の気持ち、プレーがうまくいった時のうれしさがわかるようになった。


交流戦で、最初で最後の背番号「1」をつけて投げたジョーイは、「1年前のこの時期は松葉杖だった。投げさせてもらって本当に幸せ」と声を震わせた。


これからは、3年ぶりの甲子園をめざすチームを支える立場にまわる。「大きい声には自信がある。全力で応援したいです」=敬称略(大野択生)



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